給与の設定方法は、自社に合った水準を決め、人材の採用と定着につなげる経営判断です。
相場より高いか低いかだけでなく、基本給・手当・賞与の配分や見せ方まで設計することで、限られた人件費でも採用力を高められます。
実は基本給を上げすぎると、賞与や残業代・退職金のベースまで膨らみ、あとから下げにくくなるという落とし穴もあります。
▼本記事でわかること
- 給与の決め方が採用力・定着・企業成長に与える影響
- 相場のリサーチから給与テーブル作成までの5ステップ
- 最低賃金・社会保険など、最低限押さえておきたい法的注意点
本記事では、相場の調べ方から給与の決め方、最低賃金や社会保険など最低限押さえておきたい注意点まで、中小企業がそのまま使える手順を5つのステップでわかりやすく解説します。
給与の設計は、事業を立ち上げ・運営するうえで整えるべき準備の一つでもあります。起業段階で何をすべきかは以下の記事で詳しく解説しています。
▢関連記事:【2026年最新版】起業前にやることチェックリスト10選
給与設定の重要性
給与設定は単なるコストではなく、採用力・定着率・企業成長を左右する重要な経営戦略です。
適切な給与設計により、優秀な人材の獲得と長期的な組織力強化が実現できます。
給与設定は最強の採用マーケティング施策
給与設定は最も効果的な採用マーケティング施策といえます。
転職先を選ぶ際に給与水準を重視する求職者は多く、どれほど企業理念や職場環境が魅力的でも、給与が市場相場を大きく下回れば応募自体が集まりません。
特に中小企業では知名度や福利厚生で大手に劣るため、給与での競争力確保が採用成功の鍵となります。
適正な給与体系が離職率を下げる理由
適正な給与体系の構築により、離職率を大幅に削減できます。
就職四季報のデータ分析では、平均年収と早期離職率の相関係数はマイナス0.627となっており、年収が高いほど早期離職率が低くなる明確な負の相関が確認されています。
実際に給与体系を見直し、透明性のある評価制度と適正な昇給ルールを導入したことで、離職率の削減につながった事例も見られます。
引用元:株式会社カイラボ「早期離職率と関係の強い項目は平均年収」
競合との給与差が採用ブランディングを左右する
競合企業との給与差は、採用ブランディングに直結します。
同じ業界・職種で競合より給与が低い場合、求職者は「この会社は業績が悪いのでは」「従業員を大切にしていないのでは」と感じ、応募を避ける傾向があります。
特にIT業界や専門職では給与情報が透明化されており、競合比較が容易なため、相場を下回る給与設定は採用競争で大きく不利になります。
逆に、市場相場以上の給与を提示できれば、企業の成長性や従業員重視の姿勢をアピールでき、採用ブランド向上につながります。
給与を見直しても、その魅力が求職者に届かなければ応募は増えません。
弊社メグサポは、求人媒体の運用やオウンドメディア・SEOによる集客に特化して支援しています。自社の発信が応募につながっているか、気になる点だけでも気軽に確認してみてください。
【5ステップ】中小企業が実践すべき給与設定の手順
給与設定を成功させるには、体系的に進める必要があります。ここでは市場調査から給与テーブル設計まで、実務で使える5つのステップを解説します。
ステップ1:業界・地域の給与相場を徹底リサーチする方法
給与設定の第一歩は、業界・地域の相場を正確に把握することです。
相場のリサーチには、次の2つの方法が有効です。
- 厚生労働省の賃金構造基本統計調査:企業規模別・地域別の平均賃金を確認できる
- 求人サイトの給与検索機能:同業種・同職種の募集条件を確認できる
東京と地方では最低賃金に200円以上の差があるため、事業所所在地の地域特性も重要な判断材料となります。
ステップ2:自社の支払い可能額を算出する計算式
相場を把握したら、自社の支払い可能額を算出します。
中小企業庁の白書によると、中小企業の適正な労働分配率は80パーセント程度が目安とされています。
労働分配率とは、会社が生み出した価値にあたる付加価値(売上から外部への支払いを差し引いた額)のうち、人件費が占める割合のことです。「人件費÷付加価値×100」で求められ、この比率が高すぎると経営が苦しくなり、低すぎると人材確保が困難になります。
また、社員1名あたりの付加価値を把握することで、各ポジションに適正な給与レンジを設定できます。
ステップ3:基本給・手当・賞与の最適な配分比率
給与総額を決めたら、基本給・手当・賞与の配分を設計します。
給料は「基本給+各種手当+賞与」で構成されます。配分で特に重要なのが、基本給を高くしすぎないことです。
基本給を高めると従業員の安定感は増しますが、基本給は賞与・残業代・退職金の計算ベースになるため、高く設定すると人件費全体が膨らみます。売上に貢献した従業員へは賞与で還元する形にすれば、業績に応じて柔軟に調整できます。
配分比率の目安は、次のとおりです。
- 基本給:70〜80パーセント
- 各種手当(通勤手当や家族手当など):10〜15パーセント
- 賞与:10〜15パーセント
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2025年の賞与は夏季が月給の1.02か月分、年末が1.08か月分でした。こ年間では約2.1か月分となり、これを基準に自社の賞与水準を検討できます。
引用元:[厚生労働省「毎月勤労統計調査(2025年夏季賞与の結果)」、[厚生労働省「毎月勤労統計調査(2025年年末賞与の結果)」]
ステップ4:職種・役職別の給与テーブル設計法
配分比率が決まったら、職種・役職別の給与テーブルを作成します。
設計は、まず職種や役職をグレードに分けることから始めます。次に各グレードの給与レンジを設定します。
中小企業の役職手当は、おおむね次の水準が目安です。
| 役職 | 役職手当の目安(月額) |
| 部長クラス | 約8万円 |
| 課長クラス | 約6万円 |
| 係長クラス | 約2〜3万円 |
また、初任給は大卒で20万円前後を目安とし、1回あたりの昇給額は年3,000〜5,000円程度が一つの目安です。
テーブルを可視化することで、従業員が将来の給与イメージを持てるようになります。
ステップ5:採用力を高める給与提示の見せ方
最後に、給与の見せ方を工夫して採用力を高めます。
同じ給与額でも、提示方法次第で魅力度は大きく変わります。
給与を魅力的に見せる方法は、主に次の3つです。
- モデルケースを示す:「年収例:入社3年目380万円、5年目450万円」のように示すと、応募者がキャリアパスをイメージしやすくなる
- 内訳を明示する:「月給25万円(基本給20万円+各種手当5万円)+賞与年2回」のように示すと、透明性が伝わり信頼感が高まる
- 金銭価値のある要素を併記する:福利厚生やインセンティブも書き添えると、総合的な待遇の良さをアピールできる
ここまでの設計を整えても、採用を実際に動かすには人手が必要です。
求人原稿の作成、応募者への対応、面接の日程調整を通常業務と並行するのは簡単ではありません。採用に向けた発信や運用まで手が回らない場合は、オウンドメディアの外注という選択肢もあります。
メグサポは採用実務の支援や人材面のサポートまで対応しているため、制度の設計から実行までまるごと任せることも、まずは部分的なサポートから始めることもできます。
【離職防止】社員が納得する給与体系の作り方
給与体系は設計だけでなく、運用段階での納得感が重要です。従業員が「公平である」と感じる仕組みづくりが、モチベーション維持と離職防止につながります。
透明性のある評価基準が信頼を生む
透明性の高い評価基準を設けることが、従業員の信頼獲得につながります。
具体的には、職務内容・達成目標・必要スキルを明文化し、評価項目ごとの配点や判断基準を社内で共有しましょう。
たとえば「営業職は売上達成率50パーセント、顧客満足度30パーセント、チーム貢献20パーセント」のように数値化すれば、従業員は何を評価されるか理解できます。
また、評価結果を本人にフィードバックし、改善点を伝えることで成長の道筋も示せます。
昇給・賞与ルールの明確化で不満を防ぐ
昇給・賞与のルールを明確にすることで、従業員の不満を未然に防げます。
昇給については「年1回、評価に応じて3,000〜10,000円の範囲で昇給」のように条件と金額幅を示し、賞与は「基本給×支給月数×評価係数」といった計算式を開示することが効果的です。
業績連動型の場合は、会社の利益目標と個人の評価基準の関係を説明すれば、従業員も納得しやすくなります。
給与体系の定期見直しで市場競争力を維持
給与体系を定期的に見直すことで、市場競争力を維持できます。
特に最低賃金は毎年改定されており、年々上昇が続いています。
この影響で給与の底上げが必要になり、既存社員とのバランス調整も求められます。
少なくとも年1回は業界相場と自社給与を比較し、必要に応じて給与テーブルを改定することが推奨されます。給与だけでなく事業全体を定期的に見直す観点は、起業前にやることチェックリストでも触れています。
【最低賃金・残業代・社会保険】給与設定で失敗しないための注意点
給与設定では法的リスクへの配慮が不可欠です。
知らずに違反すると罰則や労務トラブルに発展するため、ここでは押さえるべき重要ポイントを解説します。
法的リスクを回避する最低賃金・残業代の計算
最低賃金と残業代の正確な計算が、法的リスク回避の基本です。
違反すると、50万円以下の罰金などの罰則が科される可能性があります。
最低賃金については、月給を時給に換算した金額が都道府県の最低賃金を上回っているかを確認します。
計算時は通勤手当・家族手当・賞与・残業代を除いた基本給で判断します。
また、残業代は「基本給÷月平均所定労働時間×1.25(割増率)×残業時間数」で算出し、深夜労働や休日労働ではさらに高い割増率が適用されます。
社会保険料の負担を考慮した給与設計
給与設計では社会保険料の負担を十分に考慮する必要があります。
具体的には、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などが給与の約15パーセント程度を占め、企業もおおむね同程度を負担します。
つまり、従業員に月給30万円を支払う場合、企業の実質負担は約35万円となる計算です。
また、賞与からも社会保険料が徴収されるため、年収ベースでの保険料負担を事前にシミュレーションすることが重要です。
給与改定時の労務トラブルを防ぐ手順
給与改定を行う際は、適切な手順で労務トラブルを防ぎます。
一方的な給与減額は労働契約違反となり、訴訟リスクがあります。
給与改定は、次の手順で進めます。
- 従業員へ事前に説明し、合意を取得する(特に減額時は、経営状況の説明と代替案の提示が必須。労働組合がある場合は協議も行う)
- 就業規則の変更を伴う場合は、労働基準監督署へ届け出る
- 改定内容を書面で通知し、従業員の署名をもらう
【外注という選択肢】給与設定と採用を「プロに任せる」方法
ここまで読んで、「給与設計から求人広告の運用まで、自社だけで対応するのは難しい」と感じた採用担当者の方もいるかもしれません。
特に、Indeedなどの広告運用の導入を検討している企業であれば、外部の専門家に任せることで、給与の設計から採用活動までをまとめて進められます。
ここでは、目的別に3つの支援サービスを紹介します。
【制度設計】人事コンサルティングで給与体系を最適化
人事コンサルティングを活用すれば、自社に最適な給与体系を構築できます。
人事コンサルタントは、等級制度・評価制度・賃金制度を一貫して設計し、公平性と競争力を両立させた給与体系を提案します。
中小企業向けのサービスでは、50名以下規模で約60万円から利用でき、現状分析から制度設計、運用支援までワンストップで対応可能です。
また、労働分配率や人件費比率の分析を通じて、経営を圧迫しない適正な給与水準も提示してくれます。
【Indeed・広告運用】採用マーケティング支援で求人力を強化
採用マーケティング支援により、給与設定後の求人力を最大化できます。
適切な給与を設定しても、求職者に届かなければ採用にはつながりません。
特にIndeedなどの求人媒体運用では、専門的なノウハウが成果を左右します。弊社のメグサポでは、独自のテクニックにより1週間で122応募を獲得した実績があり、100万円の広告予算で1,200人以上の応募者を集めることに成功しています。
求人原稿の最適化から予算配分、効果測定まで包括的にサポートし、費用対効果の高い採用活動を実現できます。採用広告だけでなく、オウンドメディアの運用を外注して採用ブランディングを進める方法もあります。
【SEO集客】オウンドメディア運用で採用ブランディングを構築
オウンドメディア運用により、長期的な採用ブランディングを構築できます。
自社の魅力を継続的に発信することで、求職者からの認知度と信頼性が高まります。弊社のメグサポでは、コンテンツSEOの支援によりPV数を増やし、継続的に月3〜4件の企業問い合わせ獲得を実現した事例があります。
給与や働き方、企業文化などを記事として発信することで、求職者が入社前に企業理解を深められ、ミスマッチの防止にもつながります。
また、検索エンジンからの自然流入により、広告費をかけずに継続的な採用効果を得られるでしょう。
オウンドメディアにどの程度の予算が必要かは、以下の記事で詳しく解説しています。
▢関連記事:【2026年】オウンドメディアで営業効率化|平均予算と致命的ミス
採用は人材領域の専門性が求められますが、SEO・オウンドメディアによる集客と組み合わせることで、求職者への発信から応募者対応までを一貫して動かせます。
ここまでに挙げた施策は、すべてを一度に始める必要はありません。自社の状況に合わせて、いま効果が出やすいものから組み合わせて進められます。どれが自社に合うか迷う場合は、現状をもとにこちらで整理してご提案します。
給与設定でよくある質問(FAQ)
Q. 給料はどうやって決めればいいですか?
A. 給料は「基本給+各種手当+賞与」で構成されます。まず業界・地域の相場を調べ、自社が払える上限を労働分配率(人件費÷付加価値、目安80パーセント程度)で確認したうえで、基本給70〜80パーセントを軸に、各種手当と賞与をそれぞれ10〜15パーセント程度で配分するのが基本です。
Q. 基本給は高く設定したほうがいいですか?
A. 高くしすぎないのがポイントです。基本給は賞与・残業代・退職金の計算ベースになるため、高く設定すると人件費全体が膨らみます。成果は賞与で還元する形にすれば、業績に応じて柔軟に調整できます。
Q. 中小企業の労働分配率の目安はどのくらいですか?
A. 80パーセント程度が目安とされています。「人件費÷付加価値×100」で計算でき、高すぎると経営を圧迫し、低すぎると人材確保が難しくなります。自社の数値を確認したうえで、給与の上限を判断しましょう。
Q. 社員の給料を下げることはできますか?
A. 一方的な減額は労働契約違反となり、訴訟リスクがあります。下げる場合は従業員への事前説明と同意取得が必須です。就業規則を変更するなら労働基準監督署への届出も必要で、書面通知と署名で記録を残しましょう。
Q. 給料が最低賃金を下回るとどうなりますか?
A. 最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金などの罰則が科される可能性があります。判定は通勤手当・家族手当・賞与・残業代を除いた基本給で行います。最低賃金は毎年改定されるため、年1回は確認しましょう。
Q. 社会保険料の会社負担はどのくらいですか?
A. 健康保険・厚生年金・雇用保険などで給与の約15パーセント程度が目安で、会社もおおむね同程度を負担します。たとえば月給30万円なら会社の実質負担は約35万円です。賞与からも徴収されるため、年収ベースで試算しましょう。
【まとめ】戦略的な給与設定が企業の未来を変える
給与設定は単なるコスト管理ではなく、採用力・定着率・企業成長を左右する重要な経営戦略です。
▼この記事のまとめ
- 給与は業界・地域の相場を把握し、自社が支払える範囲(労働分配率の目安80パーセント以内)で設計する
- 基本給を軸に手当・賞与を配分し、基本給は高くしすぎない(賞与・残業代・退職金のベースになるため)
- 職種・役職別の給与テーブルを作り、給与の「見せ方」まで工夫して応募につなげる
- 透明な評価基準・明確な昇給ルール・定期的な見直しで、社員の納得感を保つ
- 最低賃金・残業代・社会保険などの法的要件を守る
給与設計は経営の土台づくりの一部に過ぎません。事業の立ち上げ・運営で押さえる準備の全体像は【2026年最新版】起業前にやることチェックリスト10選にまとめています。
給与設計、求職者への発信、採用の実務。本来はそれぞれ専門領域が異なり、すべてを自社だけで対応するのは簡単ではありません。
弊社メグサポの強みは、SEO・オウンドメディアによる採用集客と人材面の支援を組み合わせ、集客から応募者対応、採用実務までを一貫してお任せいただける点です。
現状の整理からでも構いません。「何から手をつけるべきか分からない」段階でも、お話を聞かせていただければ、貴社に合った進め方をご提案します。