「広告費、もっと増やすべき?それとも今の金額で合ってる?」 いざ広告を出そうとすると、いくら予算をかければいいか分からない。広告を初めて検討する経営者や担当者の多くが、まずこの壁にぶつかります。
実は、広告費の目安は業種によって最大20倍も違います。 上場企業の平均は売上の3.5%ですが、BtoB企業なら1〜3%で十分な一方、ネット通販では10〜20%が当たり前。業種を無視した目安は、ほとんど役に立たないのが実情です。
▼本記事でわかること
- 業種別の広告費平均データ
- 払いすぎを見抜く3つの指標
- Web広告とマス広告の費用相場
本記事では、広告を出すのが初めての経営者・担当者の方に向けて、業種別の広告費の平均と、自社の広告費が「適正か・使いすぎか」を数字で判断する方法をやさしく解説します。
業種・業態別の広告費平均データ一覧
広告費の適正額は業種によって大きく異なり、売上高に占める広告費の割合(広告費率)は、BtoB企業で1〜3%、EC・通販業界で10〜20%と最大20倍の開きがあるのが実態です。
▼業種・業態別 広告費率の目安
| 業種・業態 | 売上高に占める広告費率 |
| BtoB企業 | 1〜3% |
| BtoC消費財 | 3〜10% |
| 化粧品・健康食品 | 10%前後 |
| EC・通販、サービス業 | 15〜20% |
| 上場企業 全業種平均 | 3.5% |
BtoB企業とBtoC企業の広告費率の違い
BtoB企業(企業向けのビジネス)とBtoC企業(一般消費者向けのビジネス)では、広告費率に大きな差があります。BtoBの広告費率は売上の1〜3%、BtoCの広告費率は売上の3〜10%が目安とされます。
この差が生まれる最大の理由は、1件の取引でいくら売上が入るかの違いです。
▼BtoBとBtoCの広告費率比較
BtoBは1件の取引額が高額なため、少ない取引件数でも広告費を十分に回収できます。そのため広告費率は低く抑えられます。
一方BtoCは1件あたりの購入額が小さいため、利益を出すにはたくさんのお客さんに買ってもらう必要があり、その分だけ広告費率が高くなります。
取引単価の差が広告費率の差!
EC・通販業界は売上の10〜20%が相場
EC・通販業界の広告費率は売上の10〜20%が相場で、他業種と比べて突出して高い水準です。この業界はネット上で完結し実店舗を持たないため、新しいお客さんとの出会いがほぼ広告に限られることが最大の理由です。
店舗の看板を見たり、道を歩いていて入ってくれるお客さんがいない分、「商品を知ってもらう → 実際に買ってもらう」までをすべて広告でカバーする必要があり、費用がかさみます。
▼EC・通販系業種の広告費率目安
それでも高い広告費率を維持できるのは、リピート購入で回収する仕組みがあるからです。初回購入からリピートまでを含めて、1人のお客さんが最終的にいくら使ってくれるか(顧客生涯価値、LTV)が高い商材ほど、最初の購入を獲得するのに多くの広告費をかけても、最後には利益が残ります。
上記の数値はいずれも、リピートを前提に成り立つ数字です。
実店舗がない分、広告が命!
成長フェーズで変わる適正な広告費率
企業の成長フェーズによって、適正な広告費率は大きく変化します。
▼成長フェーズ別 広告費率の目安
創業期・成長期に広告費率が膨らむのは、まだお客さんの基盤がなく「知ってもらうこと」自体にコストがかかるからです。誰にも知られていない状態から市場での立ち位置を築くには、短期間で集中的に広告を出す必要があり、広告費率はどうしても高くなります。
安定期に入ると広告費率が落ち着くのは、既存のお客さんからのリピートや口コミによって、広告を使わなくても自然にお客さんが集まる流れができてくるからです。
新しいお客さんを集めるために広告に頼る割合が下がる分、広告費を抑えても売上を維持しやすくなります。成長フェーズを無視して一律の広告費率を設定すると、成長期に投資不足で機会を逃したり、安定期に使いすぎて利益を圧迫する原因になりかねません。
フェーズで「必要な投資量」が変わる!
広告費が適正か判断する3つの指標
業種別の平均データはあくまで目安にすぎません。自社の実際の売上や利益と照らし合わせて検証しないと、本当の適正額は見えてこないのが実情です。
ここでは、その検証に使える3つの指標とそれぞれの計算方法を、初心者向けにやさしく紹介します。
▼広告費の適正チェックに使う3指標
| 指標 | 何がわかるか | ざっくり言うと |
| 売上高広告費率 | 業種平均と比べた過不足 | 売上のうち何%を広告に使っているか |
| ROAS | 広告費に対する売上効率 | 広告費の何倍の売上が返ってきたか |
| LTVとCPO | 1件あたりの投資上限 | 1件獲得するのにいくらまでかけてよいか |
①売上高広告費率で見る適正ライン
広告費が適正かどうかを判断する最初のものさしが、売上高広告費率です。 売上高広告費率とは、売上のうち広告にどれだけの割合を使っているかを示す数字です。
この比率を業種平均と比べれば、自社が広告費を使いすぎているのか、逆に足りていないのかが見えてきます。
【計算式】
売上高広告費率(%)= 広告費 ÷ 売上高 × 100
【計算例】
売上1億円の会社が、広告費を1,000万円かけている場合
→ 1,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 10%
上場企業約920社を対象にした調査では平均3.5%でしたが、この数値はあくまで全業種の平均です。上記の例で広告費率が10%となった場合、前章の業種別データと照らし合わせれば、妥当性を判断できます。
たとえばBtoB企業で10%なら「使いすぎ」の可能性が高く、EC・通販なら「妥当」と判断できるわけです。
まずは自社の広告費率を出そう!
②ROASで見る損益分岐点の考え方
広告運用を黒字/赤字で判断するには、2種類のROASを理解する必要があります。
- ROAS:実際に広告を出した結果として測る「実績の数字」
- 損益分岐点ROAS:赤字にならないために最低限クリアすべき「最低ライン」
実績のROASが最低ラインを上回っていれば黒字、下回っていれば赤字、という判定の仕方です。それぞれの計算方法を順に見ていきましょう。
ROAS(実績)の計算
ROASは、広告費に対して何倍の売上が返ってきたかを示します。
【計算式】
ROAS(%)= 広告経由の売上(その広告から生まれた売上)÷ 広告費 × 100
【計算例】
広告費10万円で広告経由の売上が20万円なら
→ 20万円 ÷ 10万円 × 100 = 200%
損益分岐点ROAS(最低ライン)の計算
損益分岐点ROASは、粗利率(売上から仕入れや原価を差し引いた利益が、売上の何%を占めるか)で決まります。粗利率が高い商品ほど、低いROASでも利益が残ります。
【計算式】
損益分岐点ROAS(%)= 100 ÷ 粗利率(%) × 100
【計算例】
粗利率50%の場合
→ 100 ÷ 50 × 100 = 200%
自社の粗利率から最低ラインのROASを把握しておくことが、広告費の払いすぎを防ぐ直接の対策になります。
赤字ラインを必ず把握しよう!
③LTVとCPOから逆算する予算の上限
3つ目の指標は、LTVとCPOの組み合わせです。聞き慣れない言葉ですが、意味はシンプルです。
- LTV:1人のお客さんが、最初の購入からリピートまで合計でいくら使ってくれるか
- CPO:1件の注文をとるために、いくら広告費がかかったか
LTVの計算は、初回購入額とリピート分を足していく形になります。
【LTVの計算例】
- 初回購入額:1,980円
- 2回目以降の購入額:4,000円
- リピート率:40%
- 平均リピート回数:約2.5回(リピート率40%から算出)
→ LTV ≒ 1,980円 + 4,000円 × 2.5回 × 40% ≒ 約6,000円
このLTVから原価・経費を引いた残り(粗利益)の範囲内にCPOを収めれば、採算が取れます。
【採算判定の考え方】
LTV − 原価・経費 ≧ CPO → 採算が取れている(セーフ)
LTV − 原価・経費 < CPO → 払いすぎ(アウト)
業種平均や他社の数字ではなく、自社の商品・顧客の実数字から逆算できるため、LTVとCPOによる判断がもっとも合理的と言えます。
LTVから逆算が最も合理的!
Web広告とマス広告の媒体別費用相場
広告媒体によって必要な費用は大きく異なり、Web広告は月数万円から始められる一方、テレビCMは数百万円単位の投資が必要です。初めて広告を出す場合は、少額から始められて効果が測りやすいWeb広告から検討するのが現実的でしょう。
▼媒体別 費用感のざっくり比較
| カテゴリ | 月額の目安 | 向いている目的 |
| リスティング広告 | 20万円〜 | 今まさに買いたい人に届ける |
| SNS広告 | 3万〜50万円 | まだ知らない人に知ってもらう |
| テレビCM | 30万円〜数百万円/本 | 広く知ってもらう・ブランドを作る |
| 新聞広告 | 100万〜5,000万円/回 | 信頼できる会社だと見せる |
リスティング・SNS広告は月20〜50万円が目安
リスティング広告とは、Googleなどの検索結果の上部に表示される広告のことです。「弁護士 渋谷」のように検索した人に対して、関連する広告を表示します。
SNS広告はInstagramやX(旧Twitter)などで、ユーザーのタイムラインに流れてくる広告を指します。これらの運用は、月20〜50万円が一般的な予算目安です。
▼リスティング広告とSNS広告の予算感
リスティング広告は月額20万円から、「この広告からどれだけ問い合わせや購入が発生したか」を本格的に分析できる水準になります。SNS広告は月3万円程度の少額からでも始められますが、十分な成果を出すには30〜50万円の予算を確保するのが望ましいでしょう。
少額から始められて効果測定もしやすいため、中小企業にとって取り組みやすい広告手法と言えます。
Web広告は少額で始められる!
テレビCM・新聞広告の出稿費用の実態
マス広告は高額帯のメディアで、出稿費に加えて広告素材を作るための制作費も必要です。
▼マス広告の費用相場
※いずれも一般的な相場とされる金額です。
マス広告は高額ですが、短期間で多くの人に知ってもらえることや、「テレビで流れている会社」という信頼感を得られることに強みがあります。予算に応じて地方局や小サイズから始める方法もあります。
マス広告はブランド力アップに!
広告代理店手数料は広告費の10〜20%
広告代理店に運用を依頼する場合、手数料は広告費の20%前後が相場とされます。 手数料の対価として、戦略立案(どんな広告を出すかの計画づくり)、広告バナーや動画の制作、日々の運用調整、月次レポートの作成などの業務が提供されます。
▼月額広告費別 手数料の目安(手数料率20%の場合)
代理店によっては10〜15%の低料率や、少額予算向けの固定料金制を採用しているケースもあるため、複数社を比べて選ぶことをおすすめします。
複数の代理店を比べよう!
データに基づく広告投資で事業成長を加速させる
広告費の適正額は業種によって大きく異なり、上場企業平均3.5%はあくまで目安にすぎません。
▼この記事のまとめ
- BtoB(1〜3%)・BtoC(3〜10%)・EC通販(10〜20%)と業種で広告費率は大きく異なる
- ROAS・CPO・売上高広告費率の3指標で自社の払いすぎを数値で判断できる
- LTVから逆算した予算設計と損益分岐点の把握が払いすぎ防止の鍵
業種別の平均データで自社の立ち位置を把握し、ROAS・CPO・LTVの3指標で検証すれば、根拠のある広告投資判断ができるようになります。自社の成長フェーズに合った広告費率を設定し、定期的に見直しを続けていきましょう。
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