ハウス食品は、バーモントカレーという革新的な商品で日本のカレー市場に変革をもたらしました。
1963年に発売されたバーモントカレーは、子どもと大人が一緒に食べられるという新しい市場を作り出し、60年以上売れ続けるロングセラー商品となっています。
▼本記事でわかること
- バーモントカレーが市場1位になった理由
- ハウス食品のマーケティング戦略の本質
- 一般企業でも応用できるマーケティング手法
この記事では、ハウス食品が実践したマーケティング戦略を分析し、あなたのビジネスでも活用できる具体的な施策をお伝えします。
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目次
バーモントカレーが発売された1963年の市場状況
1963年当時のカレー市場には、大きな問題がありました。
これらの課題を解決するために、ハウス食品は新しいカレーの開発に着手します。
カレーは「大人が食べる辛い料理」だった
1963年当時、カレーといえば辛い大人の食べ物という認識が一般的でした。
当時のカレーは、シャバシャバで辛いというイメージを持たれていました。
辛さを抑える工夫として、家庭では牛乳や果物を加えて食べやすくする方法が取られていましたが、根本的な解決にはなっていませんでした。
子どもはカレーを食べられず家族で別メニューを作っていた
当時の副社長・浦上郁夫が消費者に聞き取り調査を実施しました。
「家庭でお子さんにカレーを食べさせるとき、どうしているのか」と質問したところ、驚くべき実態が明らかになりました。
▼家庭での工夫
- 牛乳を入れて辛さを和らげている
- 果物を入れて甘くしている
- 子ども用に別のメニューを用意している
この調査から、辛くないマイルドなカレーにニーズがあることを発見しました。
家族全員で同じカレーを食べたいニーズがあった
調査で明らかになったのは、家庭では家族全員で同じカレーを食べたいというニーズでした。
当時は家庭の主役が父から子どもに移ってきている時代でもあり、子どもを中心とした食卓が求められていました。
ハウス食品はこのニーズに着目し、子どもも大人も一緒に食べられるマイルドなカレーの開発を決定します。
バーモントカレーが「甘口カレー」で新市場を作った戦略
ハウス食品は、既存のカレー市場にはない新しい商品を投入する戦略を選びました。
競合が注目していなかった子ども市場に焦点を当てることで、独自のポジションを確立しました。
子どもと一緒に食べられるカレーという発想
バーモントカレーの開発コンセプトは、子どもにも食べてもらえるようなマイルドなカレーでした。
最初は果物を擦って入れるなど、さまざまな試行錯誤が行われました。
最終的に行きついたのが、りんごとはちみつの組み合わせでした。
この組み合わせが、最もマイルドで食べやすく、食べ飽きないものとして選ばれました。
りんごとはちみつで甘さとまろやかさを実現した
りんごとはちみつの採用には、明確な理由がありました。
開発時は「フルーツカレー」と呼ばれており、さまざまな果物を試していました。
▼りんごとはちみつが選ばれた理由
- 食べやすさが最も優れている
- 食べ飽きない味わい
- バーモント健康法の流行と結びつけられる
当時アメリカのバーモント州に伝わるりんご酢とはちみつを使った健康法が流行していたことから、商品名を「バーモントカレー」と名付けました。
大人向けばかりの市場で子ども市場を開拓した
バーモントカレーは、既存市場の盲点を突いた戦略でした。
当時のカレー市場は大人向けばかりで、子ども向けの商品は存在しませんでした。
ハウス食品は、この空白地帯を狙って新市場を創造しました。
子ども向けというポジショニングにより、競合との直接対決を避けながら市場を拡大することに成功しました。
バーモントカレーが直面した問題と解決策
バーモントカレーは発売当初、大きな反発に直面しました。
これらの問題を、ハウス食品はマーケティング戦略で乗り越えました。
最初は「子ども向けカレー」が理解されなかった
発売当初、販売店からは「りんごとはちみつ入りの甘いカレーなんて売れるはずがない」と猛反発されました。
当時は「カレーは辛いもの」という認識が広まっていたため、甘いカレーという発想は受け入れられませんでした。
しかし、ハウス食品はこの反発にひるまず、CMや店頭での試食宣伝活動を積極的に展開しました。
消費者に直接商品を届けることで、実際の味を体験してもらう戦略を取りました。
競合が後追いで甘口カレーを出して市場が混戦した
バーモントカレーのヒットを受けて、競合他社も甘口カレーを投入しました。
市場は一気に混戦状態となり、差別化が急務となりました。
ハウス食品は、単なる甘口カレーではなく、バーモントカレーならではの価値を訴求する必要に迫られます。
CMで「家族団らん」のイメージを打ち出して差別化した
競合との差別化のため、ハウス食品は感情的なつながりを作る戦略を採用しました。
CMでは「家族団らん」のイメージを前面に打ち出し、家族で一緒に食べる幸せを訴求しました。
1973年からは西城秀樹をCMキャラクターに起用し、11年間という長期にわたって出演してもらいました。
「ヒデキ、感激!」のキャッチコピーと「ハウスバーモントカレーだよ」のコマーシャルソングで、ブランドイメージを定着させました。
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バーモントカレーが一気に広がった1963年以降の時期
発売数カ月後、バーモントカレーは爆発的なヒット商品となりました。
CMと口コミの相乗効果により、増産体制が間に合わないほどの品切れ状態が続きました。
テレビCMで「りんごとはちみつ」のフレーズを印象付けた
バーモントカレーのCMには、印象的なコマーシャルソングがありました。
作詞・野坂昭如、作曲・いずみたくというゴールデンコンビが手がけたCMソングは、多くの人の記憶に残りました。
「ハウス・バーモントカレー とろりとけてるリンゴとハチミツ」というフレーズが、商品の特徴を端的に伝えました。
テレビという新しいメディアを最大限活用し、全国的な認知度を獲得しました。
母親の「子どもも食べられる」口コミが広がった
バーモントカレーの普及には、母親たちの口コミが大きく貢献しました。
実際に子どもと一緒に食べた母親たちが、「うちの子も喜んで食べた」と周囲に伝えることで、自然な形で商品が広がりました。
店頭での試食宣伝活動も、この口コミを生み出す仕掛けとして機能しました。
消費者が実際に味を確かめることで、安心して購入できる環境を作りました。
家庭の定番カレーとして定着し60年以上売れ続けている
バーモントカレーは、国内売上No.1カレーブランドとして現在も支持されています。
2022年12月時点で累計824億皿以上を販売しており、日本の食卓に欠かせない存在となりました。
60年以上売れ続けている背景には、時代に合わせた継続的な改良があります。
発売以降、15回以上の味の改良を実施し、その時代のお客様の嗜好に合わせた微調整を続けてきました。
バーモントカレーが市場1位になった後の施策
市場1位を獲得した後も、ハウス食品は進化を止めませんでした。
顧客のニーズに応え続けることで、長期的なブランド価値を維持しました。
甘口・中辛・辛口で家族全員の好みに対応した
発売当初は甘口のみでしたが、好みの変化に応じてバリエーションを拡大しました。
1972年に辛口、1983年に中辛を追加することで、家族全員の好みに対応できる商品ラインナップを完成させました。
▼辛さのバリエーション
- 甘口:辛味順位1(最もマイルド)
- 中辛:辛味順位2
- 辛口:辛味順位3
これにより、一つのブランドで幅広い顧客層をカバーすることが可能になりました。
パッケージとCMで「家族の幸せ」を伝え続けた
ハウス食品のマーケティングは、一貫したイメージ訴求が特徴です。
広告のトーンアンドマナーは、「家族で楽しくおいしく食べていただけるような、明るく健康的なイメージ」と定義されています。
CMでは、面白ければいい、目立てばいいという考えではなく、CMを見た方が食べてみたいと思うかどうかを判断基準としています。
タレント起用も、ハウス食品のイメージに合う方に商品の顔として長く出ていただく方針を取っています。
ブランドイメージの一貫性が重要!
レシピ提案で「使い方」を発信し続けた
バーモントカレーは、レシピ提案による情報発信を継続してきました。
単にカレーライスとして食べるだけでなく、さまざまなアレンジ方法を提案することで、使用頻度の向上を図りました。
2024年には「バーモントカレーシェフズアレンジ」というペーストタイプの新商品も発売し、若年夫婦二人世帯という新たなターゲットにもアプローチしています。
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一般企業でも真似できるバーモントカレーのマーケティング方法
ハウス食品の成功事例は、一般企業でも応用可能です。
これらは特別な資源がなくても実践できる施策です。
既存市場の「困っている人」を見つけて新市場を作る
バーモントカレーの成功の本質は、既存市場の空白地帯を発見したことにあります。
当時のカレー市場では、「子どもが辛くて食べられない」という課題が見過ごされていました。
ハウス食品はこの課題に着目し、子ども向けという新しい市場を創造しました。
▼新市場創造のステップ
- 既存市場の課題を徹底的に調査する
- 見過ごされている顧客層を特定する
- その顧客層のニーズに応える商品を開発する
このアプローチは、どの業界でも応用できます。
イメージ訴求で感情的なつながりを作る
商品の機能だけでなく、感情的な価値を訴求することが重要です。
バーモントカレーは「家族団らん」というイメージを前面に打ち出すことで、単なる甘口カレー以上の価値を提供しました。
ハウス食品は「お客様起点のマーケティング」を常にこだわっており、経営会議の冒頭には必ずお客様の声を報告しています。
顧客の声に真摯に向き合い、変化への対応を怠らない姿勢が長期的な成功を支えています。
情報発信で使い方を提案し続ける
商品を売って終わりではなく、使い方を提案し続けることが重要です。
バーモントカレーは60年以上にわたり、レシピ提案や新商品開発を通じて、顧客との接点を作り続けています。
現代では、メタバースプラットフォーム「cluster」でカレーをテーマにしたワールド「ひみつのカレー島」を公開するなど、新しい顧客接点の創出にも取り組んでいます。
時代に合わせて情報発信の方法を変えながらも、顧客との関係性を維持し続ける姿勢が求められます。
貴社のビジネス課題に合わせた戦略立案をサポートします。
市場分析から施策実行まで、経験豊富な専門家が伴走支援いたします。
ハウス食品に関するよくある質問
ハウス食品に関して、よく寄せられる質問をまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
バーモントカレーはなぜ60年以上売れ続けているのか?
バーモントカレーが60年以上売れ続けている理由は、時代に合わせた継続的な改良にあります。
おおもとのコンセプトである「まろやかなコクや食べやすさ」は変えていませんが、その時代の嗜好に合うように微調整を続けています。
発売以降、15回以上の味の改良を実施し、お客様の声を参考にしながら風味や色味を調整してきました。
また、アレルギー対応商品や健康志向の商品など、時代のニーズに寄り添った商品展開も行っています。
バーモントカレー以外のハウス食品のヒット商品は?
ハウス食品には、バーモントカレー以外にも多数のロングセラー商品があります。
▼主なヒット商品
- シチューミクス(1966年発売)
- フルーチェ(1976年発売)
- ウコンの力(2004年発売)
ウコンの力は発売3年で累計1億本を販売し、売上高150億円規模に成長しました。
これらの商品に共通するのは、お客様のニーズを深く理解した開発です。
ハウス食品のマーケティングで最も特徴的なことは?
ハウス食品のマーケティングで最も特徴的なのは、お客様起点の徹底です。
経営会議の冒頭には、毎回必ず商品やサービスへのご指摘事項やご要望事項について報告し、速やかに対応策を討議・決定しています。
また、2017年からは行動観察などの手法を取り入れ、お客様のインサイトをより深く理解する取り組みを強化しています。
プロダクトアウト+広告投下という従来の手法から、ユーザー体験やコトを作っていく開発アプローチに転換しました。
ハウス食品が海外展開で成功している理由は?
ハウス食品は2012年から海外事業に本格的に注力し、2020年の海外比率を売上高20%、利益30%にする目標を掲げました。
海外展開では、米国、中国、ASEANの3エリアに集中し、バーモントカレーなど日本式カレーを展開しています。
中国では、日本の1970年代と同様の市場環境にあると判断し、西城秀樹を起用した当時と同じアプローチを実践しています。
世界の食卓でも家族そろって一緒においしく日本式カレーを食べていただきたい、という一貫した想いが成功の理由です。
ハウス食品のマーケティング戦略で大切なこと
ハウス食品の成功事例から学べることは、顧客理解を起点としたマーケティングの重要性です。
▼本記事のポイント
- 既存市場の空白地帯を見つけて新市場を創造する
- 感情的なつながりを作るイメージ訴求を行う
- 時代に合わせて継続的に改良し続ける
これらの施策は、規模に関わらずどの企業でも実践可能です。
戦略の立案から実行支援まで、専門家にご相談ください。
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