ベクトルは1000億円のPR市場ではなく7兆円の広告市場を狙い、一気通貫のビジネスモデルで成長を実現しました。
▼本記事でわかること
- ベクトルの成功要因と戦略
- ベクトルのビジネスモデル
- ベクトルから学べる教訓
本記事を読めば、ベクトルの戦略を自社のマーケティング施策に活かせます。
ビジネス戦略の設計や統合的なマーケティング施策でお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
弊社では、戦略設計から実行支援まで包括的なマーケティング支援を行っております。
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目次
ベクトルが成功した理由
ベクトルの成功には、市場選択と事業モデルの2つの要因があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1,000億円のPR市場ではなく7兆円の広告市場を狙った
ベクトルは創業当初から、小さな市場ではなく大きな市場を狙いました。
PR市場は約1,000億円規模ですが、広告市場は約6兆円規模です。
| 市場 | 規模 |
| PR市場 | 約1,000億円 |
| 広告市場 | 約6兆円※ |
※広告市場規模は参考値
約6倍の市場規模の違いがあります。
多くのPR会社が戦略PRを掲げて広告市場を狙いましたが、ベクトルが最も成長できた理由は時代の変化を捉えた点にあります。
お客さんの課題をワンストップで解決する体制を作った
ベクトルは「広告業界のSPA」を目指しました。
SPAとは製造小売業のことで、企画から実行まで一気通貫で行うビジネスモデルです。
日本の広告業界は分業体制が主流でした。
PRはPR会社、動画は動画制作会社という形で、それぞれの会社が専門分野のみを担当していました。
ベクトルはこの非効率な仕組みを変革しました。
お客さまの視点でモノを広めるための答えをワンストップで提供できる体制を構築したのです。
ベクトルが創業期から続けてきたこと
ベクトルは創業期から一貫して、商品やサービスを広めることに特化してきました。
これらの取り組みが、後の成長の土台となりました。
PRを軸に企業のコミュニケーション支援を行う
ベクトルは1993年にセールスプロモーション事業として創業しましたが、2000年にPR事業へ転換しました。
当時のPR業界には既に大手企業が存在していました。
しかしベクトルは独自の戦略を取りました。
| 大手PR会社 | ベクトル |
| 広報PR中心 | 商品・サービスの広告宣伝PR |
商品やサービスを広めることに特化したのです。
転機となったのが2008年のリーマンショックです。
企業は広告予算の大幅な縮小を迫られました。
▼企業が求めたもの
- 低コストでメディアに載る方法
- 番組やWebで紹介してもらう手段
- 口コミで話題にする仕組み
多額の費用をかけずに認知度を高める手段として、PRへの注目が急増しました。
ベクトルはこのニーズに応える形で急成長を遂げたのです。
メディアとの関係を作り情報を広める仕組みを持つ
ベクトルの強みは、メディアとの強固な関係構築にあります。
単にプレスリリースを送るだけではありません。
▼ベクトルのメディアリレーション
- プレスリリースの作成
- 配信先メディアの抽出
- リリースの配信
- 配信後のメディアフォロー
- 取材誘致と同席
- 取材後のフォロー
- 記事の確認・分析
一貫したプロセスで情報を届けます。
各メディアの特性を理解し、最適なタイミングで最適な情報を届ける仕組みを構築しました。
クライアントの情報を確実にメディアで取り上げてもらう体制を整えたことで、多くの企業から継続的な支持を得ています。
ベクトルが成熟期に挑戦したこと
ベクトルは成熟期に入ると、PR事業の枠を超えた新たな挑戦を始めました。
これらの挑戦が、ベクトルの事業領域を大きく広げました。
プレスリリース配信のPR TIMESを立ち上げた
ベクトルは2005年にPR TIMESを設立しました。
従来のプレスリリースには大きな問題がありました。
メディアにしか届かず、一般の人は読めなかったのです。
PR TIMESは、この問題を解決しました。
▼PR TIMESの革新
- プレスリリースをWebサイトで一般公開
- メディア向け配信と同時に消費者にも届ける
- 企業と生活者を直接つなぐツールに変革
この仕組みが大きな支持を集めました。
2018年には東証一部(現プライム)に上場し、上場企業の約60%が利用するサービスに成長しています。
企業のニュースリリースを確実にWebメディアで掲載してもらうプラットフォームとして、業界のインフラとなったのです。
投資事業で32社を上場させてノウハウを蓄積
ベクトルは投資事業にも注力しています。
単なる資金提供ではありません。
▼ベクトルの投資支援
- 企業への資金投資
- PRとIRの全面的なサポート
- 上場までの伴走支援
PRとIRの専門知識を活かした支援を行っています。
その結果、子会社を含め32社がIPOを果たしました。
200社以上のスタートアップに投資し、若い起業家を支援するノウハウを蓄積してきました。
投資先企業の成長支援を通じて、ベクトル自身も多様な業界知見を獲得しています。
ベクトルのビジネスモデルと収益の仕組み
ベクトルのビジネスモデルは、製造業のSPAを広告業界に応用したものです。
この仕組みが、高い収益性を実現しています。
広告業界のSPAモデルで企画から実行まで一気通貫
ベクトルは「広告業界のSPA」を標榜しています。
SPAとは何か。
製造小売業のことです。
ユニクロやニトリが代表例です。
| 従来の広告業界 | ベクトルのSPAモデル |
| 分業体制 | 一気通貫 |
| PRはPR会社、動画は動画会社 | 全て自社で完結 |
| 外注コスト発生 | 内製化でコスト削減 |
企画・制作・配信まで全て自社で行うのが特徴です。
従来の広告業界は完全な分業体制でした。
PRはPR会社、動画は動画制作会社、デジタルはデジタル専門会社という形です。
この仕組みは非効率でした。
ベクトルは全てを内製化しました。
顧客のニーズに応じて、必要な技術を持つ企業を買収することで、ワンストップで対応できる体制を整えたのです。
これによりZARAのように、低コストでスピーディにサービス提供できるようになりました。
40社以上のグループ会社で多様なサービスを提供
ベクトルグループは40社以上の子会社を抱えています。
その事業領域は多岐にわたります。
▼ベクトルグループの主要事業
- PR事業
- プレスリリース配信事業
- ダイレクトマーケティング事業
- デジタルマーケティング事業
- HR事業(採用支援)
- 投資事業
総合的なコミュニケーション支援を実現しています。
クライアントは複数の会社に発注する必要がありません。
ベクトル1社に依頼すれば、戦略立案から実行、効果測定まで全て対応できます。
この仕組みが、継続的な受注と高い顧客満足度につながっているのです。
ベクトルから学ぶマーケティング戦略
ベクトルの戦略には、他の企業にも応用できる重要な教訓があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
お客さんが次に困ることを予測して事業を作る
ベクトルの事業展開には明確なロジックがあります。
顧客の次の課題を先回りするという考え方です。
例を見てみましょう。
▼ベクトルの事業展開の流れ
- PR支援を行う
- 「プレスリリースを配信したい」というニーズが生まれる
- PR TIMESを立ち上げる
- 「動画でPRしたい」というニーズが生まれる
- 動画制作会社を買収する
- 「デジタルマーケティングもやりたい」というニーズが生まれる
- デジタルマーケティング事業を開始する
この連鎖が続いています。
顧客が今困っていることを解決するだけでは不十分です。
次に何が必要になるかを予測し、先に準備する。
この姿勢が、ベクトルの継続的な成長を支えています。
分業ではなく全部自社で完結させる
ベクトルは外注に頼りません。
必要な機能は全て内製化しています。
| 従来の企業 | ベクトル |
| 専門外は外注 | 必要な技術は買収して内製化 |
| コーディネートに時間がかかる | 社内で即座に連携 |
| 外注コストが発生 | コスト削減を実現 |
自社で完結させることの優位性は明確です。
スピードが圧倒的に速くなります。
外部との調整が不要なため、意思決定から実行までのリードタイムが短縮されます。
品質管理も容易になります。
全てのプロセスを自社で管理できるため、一貫した品質基準を保てるのです。
ただし注意点もあります。
内製化には莫大な資金と人的資源が必要です。
ベクトルは買収という手段を使うことで、この課題を解決しました。
ベクトルの成長を支えた施策
ベクトルの成長には、独自の人材育成と海外展開が大きく貢献しています。
これらの施策が、継続的な成長を実現しました。
若手が新規事業を作れる「アントレプレナー制度」
ベクトルには「アントレプレナー制度」があります。
社内人材から起業家や事業責任者を育成する仕組みです。
この制度の特徴は何か。
年齢や役職に関係なく、誰でも新規事業に挑戦できる点です。
▼アントレプレナー制度の特徴
- 社員が新規事業を提案できる
- 採用されれば事業責任者に
- 失敗しても評価される文化
実際の成果も出ています。
ベクトルのグループ会社の多くは、この制度から生まれました。
| 従来の企業 | ベクトル |
| 新規事業は経営層が決定 | 社員が提案して実行 |
| 失敗はマイナス評価 | 挑戦を評価する文化 |
| 年功序列 | 実力主義 |
20代で事業部長になった例もあります。
この制度が、ベクトルの革新性を支えているのです。
海外10拠点でアジアNo.1のPR会社に
ベクトルは2011年から海外進出を開始しました。
理由は明確です。
日本市場の成長の不確実性を見据えたからです。
まず中国の上海・北京に進出しました。
その後、アジア各国に拠点を拡大しています。
▼ベクトルの海外展開
- 2011年:海外進出開始
- 中国(上海・北京)に拠点設立
- 現在は海外10拠点で事業展開
- アジアNo.1のPR会社に成長
各国の現地事情に合わせたPRプランを提供できる体制を構築しました。
グローバル展開を視野に入れる日本企業にとって、海外のPR支援ができることは大きな強みです。
この海外ネットワークが、ベクトルの競争優位性をさらに高めています。
ベクトルに関するよくある質問
ベクトルについて、よく寄せられる質問に答えます。
それぞれ見ていきましょう。
ベクトルのサービスは中小企業でも使える?
ベクトルは大企業向けのイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、中小企業も利用できます。
特にPR TIMESは、中小企業やスタートアップにも広く利用されています。
▼ベクトルグループの対応範囲
- 大企業:包括的なPR支援
- 中小企業:PR TIMESでのプレスリリース配信
- スタートアップ:投資支援とPR・IR支援
ただし注意点があります。
大手PR会社の支援は数百万円から数千万円の費用がかかることが一般的です。
予算が限られる中小企業は、まずPR TIMESのようなツールから始めるのが現実的でしょう。
PR会社とマーケティング会社の違いは?
この2つは混同されやすいですが、目的が異なります。
| PR会社 | マーケティング会社 |
| 企業と社会の関係構築 | 商品・サービスの販売促進 |
| メディア露出・認知向上 | 売上・利益の向上 |
| 中長期的な信頼構築 | 短期的な成果重視 |
PRは関係構築、マーケティングは売上創出が主目的です。
ただし最近は境界が曖昧になっています。
ベクトルのように、PR会社がマーケティング支援も行うケースが増えているのです。
統合的なコミュニケーション戦略が求められる時代になっています。
ベクトル以外で同じような会社はある?
ベクトルのように一気通貫型のPR会社は増えています。
▼総合PR会社の例
- 電通PR
- 博報堂DYメディアパートナーズ
- サニーサイドアップ
- オズマピーアール
しかしベクトルほど徹底して内製化している会社は少ないです。
多くのPR会社は、専門外の領域は外注に頼ります。
ベクトルの特徴は、必要な機能を買収して自社に取り込む積極性にあります。
この姿勢が、ベクトル独自の競争優位性を生み出しているのです。
ベクトルのビジネス戦略から学べること
ベクトルの成功には、明確な戦略と実行力があります。
▼本記事のポイント
- 小さな市場ではなく大きな市場を狙う戦略
- 企画から実行まで一気通貫のSPAモデル
- 顧客の次の課題を先回りする事業展開
これらの視点を自社のマーケティング戦略に取り入れてみてください。
ビジネス戦略の設計や統合的なマーケティング施策でお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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貴社の成長戦略を一緒に描きませんか。