オフィスの広さはおおよそ「従業員数×一人当たり3〜4坪」が平均です。人数別に置き換えると10人で30〜40坪、50人で150〜200坪が一般的と言えるでしょう。
実際に、東京23区にある企業の在籍1人当たり面積の中央値は「3.8坪」でした。ただ、家具メーカーの推奨坪数は2~4坪と、より小さい坪数を示しています。法律の最低基準はもっと少なく、一人あたり1.4坪です。
ここから、多くの会社が知らず知らずのうちに「無駄に広いオフィス」に多く経費を取られているという見方もできるのではないでしょうか。
法人運用において、なるべく不要な固定費は落としたいもの。この記事を読めば、オフィスを借りる際に「どの項目を、どこまでなら削ってもいいのか」、そして「本当に必要なオフィスの広さはどのくらいなのか」を理解できます。
▼本記事でわかること
- オフィスに必要な広さの人数別の坪数目安
- 賃料を削るなら何から削るべきか(削っていい項目の順番)
- 賃料以外で削れる費用・削ってはいけない費用
目次
オフィスの賃料、削るならどこか|立地・路線・坪数・築年数で比較
オフィスの賃料を構成する要素は、立地・路線・坪数・築年数の4つです。削れる候補は4つあっても、削ってよい順番は決まっています。
立地を削ると採用が止まる|安易に削ってはいけない項目
立地を妥協して郊外に出ると、賃料は下がる代わりに採用面で不利になります。採用エージェントは候補者に紹介する前にオフィスの立地を確認するため、「アクセスが悪い」と判断されると紹介数自体が減ります。また、採用媒体掲載の場合でも立地が悪いと応募数、内定承諾率に影響がでることもあり、注意が必要です。
例えばシリーズA前後のスタートアップで、賃料を抑えるために交通の便が悪いエリアに移転した結果、エンジニア採用ができず事業成長が止まったというケースもあります。立地は採用と企業イメージに直結するため、最後まで削らないのが定石です。
路線数が多くても、社員の家が近くなければ意味がない
立地と合わせて検討材料に挙がることの多い、使える路線数。多少郊外でも「4路線使える」などは、一見採用面でアピールできそうに思えます。しかし、例えば「4路線使える」という理由で築地の新築ビルを契約したものの、いざ働き始めてみると社員の住んでいるエリアからは結局乗り換えが必要で、路線数の恩恵を受けた社員は一人もいなかったというケースもあります。
実際のところ、社員が本当に気にしているのは「乗り換え数」ではなく「通勤時間の長さそのもの」です。20代の転職意識調査では、希望する通勤時間は平均30.7分、「15〜45分以内」が半数超となっており、テレワーク経験者の69.7%が「通勤時間を短くしたい」と回答しています。乗り換え回数の少なさより、絶対的な所要時間の短さを求めている層が圧倒的多数ということです。
築年数の妥協は意外と効く|同じ立地で賃料が大きく変わる
同じエリア内でも、築年数が10年違えば賃料は2〜3割変わるケースがあります。立地を維持したまま賃料を削りたい場合、築年数の妥協は比較的ローリスクな選択肢です。
ただし、あまりに古いオフィスは採用面で不利になる場合もあります。見た目や雰囲気への影響があるか、ぱっと見でオフィスを訪れた人からどう思われるかを考え、一定のラインを超えないように注意しましょう。
坪数を削るのが結局一番ノーリスク|次のH2で下限を解説
立地・路線・築年数を維持したまま賃料を下げる方法は、坪数を削ることです。一人当たり面積を1坪減らせば、10人企業で10坪、年間賃料で数十万円〜数百万円の差が出ます。
坪数を削っても採用に影響しにくく、レイアウト次第で快適性も維持できます。
削る優先順位:坪数→築年数→路線→立地
賃料を削る際の優先順位は、坪数→築年数→路線→立地です。坪数は削っても採用に響きにくく、立地は最後まで死守する。この順番で検討すれば、必要以上に賃料を払うリスクも、削りすぎて採用が止まるリスクも回避できます。
オフィスの広さの最低基準|一人当たり何坪まで削れるか
坪数を削るにしても、下限値があります。法律・推奨・実態の3つの基準値を押さえることで、これから契約しようとしている物件がが「削れる余地のある状態」か「削りすぎ」かを判断できます。
法律上の下限は一人当たり1.4坪|実態中央値の半分以下まで合法
事務所衛生基準規則の第2条では、労働者を常時就業させる室の気積(床面積×天井高)を、設備の占める容積などを除いて1人につき10立方メートル以上確保すると定められています。天井高を2.5mで換算すると、床面積は約4平方メートル=約1.4坪が一人当たりの最低基準です。
1.4坪と聞いてもピンとこないかもしれませんが、これはタタミ約3畳分の広さで、デスク1台と椅子を置いたら埋まるぐらいの広さです。この狭さでも法律上は合法、ということになります。
つまり法律上は、実態調査の中央値(3.8坪)の半分以下まで圧縮しても合法です。下限まで削るかは別の話として、「下限まで余裕がどれだけあるか」を知っておく価値はあります。
家具メーカー推奨は2〜4坪|なぜ「2倍幅」の推奨なのか
オフィス家具メーカー各社が公表している推奨値は、おおむね一人当たり2〜4坪(約6.6〜13.2平方メートル)の範囲です。推奨値の幅が2倍もあるのは、業務がデスクワーク中心か来客対応中心か、社員のデスクサイズや書類量によって必要な広さが変わるためです。
スタートアップでデスクワーク中心の業態なら、推奨レンジの下限(2坪)に寄せても無理なく回ります。
実態の中央値は3.8坪|多くの企業は不必要に広いオフィスを借りている
ザイマックス総研の調査では、2025年の東京23区における在籍1人当たりオフィス面積の中央値は3.8坪でした。家具メーカーが推奨する2〜4坪のレンジでも、ほぼ上限まで取っている計算で、法律下限の倍以上です。
中央値が推奨レンジの上限ギリギリということは、半数以上の企業が「快適に過ごせる広さ」を超えてオフィスを借りていることになります。削れる余地は、多くの企業で社員数×1〜2坪は残っているはずです。
※出典:ザイマックス不動産総合研究所「1人あたりオフィス面積調査(2025年)」
推奨下限の2坪まで削れるか|実際に削った会社の証言
推奨下限の2坪まで圧縮できるかは、業務スタイルとレイアウト次第です。フリーアドレスを導入し、書類のデジタル化を進めれば、一人当たり2〜2.5坪でも回せます。
ただし、後述するように2坪を下回ると物理的な不具合が出始めます。「快適に削れる下限」は2坪、「削ってはいけない下限」は1.4坪と覚えておくと判断しやすくなります。
削りすぎて後悔する3つのパターン
削れる余地があるからといって、限界まで削ると別の問題が発生します。実際に後悔した経営者の体験談を3つのパターンで紹介します。
2坪を切ると体に物理的な被害が出る|壁に頭をぶつけ続けた経営者の話
「家賃が安くて二人入れば何でもいい」と格安レンタルオフィスを契約した結果、椅子を後退させて伸びをした瞬間、後頭部が壁に激突する事態が頻発するというケースもあります。狭すぎるオフィスでは、椅子の引き代や立ち上がるスペースさえ確保できません。
ちなみに一人当たり2坪は畳4畳とほぼ同じ広さです。結局1.2倍広い物件にすぐ再移転、というのもよくあるパターン。一人当たり面積が2坪を切ると、こうした物理的な圧迫感や体への被害が現実に起きます。
コストを削った数十万円より、再移転の初期費用と業務停滞のほうがはるかに高くつきます。限界を攻めるとしても、一人当たり2坪は切らないようにしましょう。
「増員予定」で大きく借りた会社、結局採用せず初期費用で窮地に
逆に「採用を見越して大きめに借りる」のも後悔パターンの典型です。例えば「これから人を雇うから、迎え入れる箱が必要」と勢いで大きめのオフィスを契約。しかし法人の初期費用として家賃の半年分を先に支払うことになり、契約段階で資金を大きく削られてしまうケースもあります。
具体的には、月額家賃50万円の物件なら、契約時に300〜600万円が一発で消えます。資金調達直後の創業期では、初期費用だけで運転資金1〜2か月分がなくなる計算です。広めに借りた瞬間、採用前に資金が尽きる構造になっています。
増員見込みで借りる場合は、本当にその人数を採用するのか、採用数が増えたら移転する前提ではダメなのかをよく考えることが大切です。
古すぎるオフィスは採用エージェントから紹介されにくくなる
築年数の妥協は比較的にローリスクですが、限度はあります。採用エージェントは候補者に紹介する前にオフィス環境を確認することが多く、「このオフィスでは紹介できない」と判断されたり、採用媒体においても応募率が下がるなどの弊害が考えられます。
築年数の古さそのものより、清潔感・設備の最低限のグレードを保てているかが判断基準です。築20年でも内装をリフォームしていれば問題ない場合もあれば、築10年でも内装が古いと敬遠されるケースもあります。
人数別オフィスの広さの目安|在席稼働率でも考える
一人当たり面積の目安が分かったら、人数別の必要坪数を考えます。ただし在籍人数を単純にかけ算するだけでは、必要以上に広く見積もりがちです。
在席稼働率の落とし穴|在籍5人でも実際の出社は3人になる
ハイブリッドワークが定着した現在、在籍人数と実際の出社人数は一致しません。在籍5人でも、在宅勤務2人+外回り営業1人+出社2人なら、実際にオフィスを使うのは2人です。
在籍人数で計算するのではなく、実際にオフィスを使う人数(在席人数)で計算すれば、必要な坪数は2〜4割減ります。例えば在籍10人でも実際の出社が6人なら、必要面積は単純計算の30坪から20坪台前半に圧縮できます。年間賃料で数百万円の差になるケースもあります。
1〜2人(創業期)の広さの目安|まずは10坪あれば足りる
創業1〜2人のフェーズでは、10〜15坪のレンタルオフィスやセットアップオフィスで十分です。会議室は共用で借りられる物件が多く、設備投資もほぼ不要。月額10〜20万円のレンジで始められます。
レンタルオフィスのなかには、系列拠点間で柔軟に引っ越せるタイプもあります。少人数フェーズでは固定の賃貸契約より、月単位で動ける契約形態のほうがリスクが低いです。
3〜5人の広さの目安|会議室を持つなら17坪
3〜5人になると、来客対応や採用面接の機会が増え、自社の会議室が必要になります。執務スペース12坪+会議室5坪で合計17坪が目安です。会議室を持たず近くのコワーキングや喫茶店で対応する選択肢もありますが、機密性の高い商談がある業態では自社内に会議室を持ったほうが安全です。
10人規模の広さの目安|稼働率6割なら20坪台でも回る
10人規模では、在席稼働率6割を前提にすれば20坪台でも運用可能です。フリーアドレス導入+集中ブース+小会議室で構成すれば、25〜30坪に収まります。固定席を維持する場合は30〜40坪が必要です。
スタートアップ向けの居抜きオフィス・セットアップオフィスを活用すれば、内装工事費を抑えて10人規模でも500万円前後のコスト削減が見込めます。
20〜30人規模の広さの目安|固定席を捨てればさらに削れる
20〜30人規模になると、固定会議室と打ち合わせブースの両方が必要になります。固定席前提なら60〜120坪、フリーアドレス+ABW(業務内容に応じて場所を選ぶ働き方)を取り入れれば50〜80坪まで圧縮できます。
この規模からは部署分割や集中ブース設置の検討が必要で、レイアウト設計の巧拙が必要坪数を大きく左右します。
スタートアップは「成長したら出ていく」前提のほうが正解|1拠点で完結は無理
スタートアップで採用見込みを織り込んで大きく借りるのは、初期費用を圧迫します。例えば3年で組織が倍々に増えていく企業の場合、「坪単価2万円×100坪を、1年後に45人→100人に増える前提で借りる」決断は重いです。
実際、組織を倍増させながら3年で3回移転し、その都度同じエリア内で段階的に拡張していくスタートアップも珍しくありません。例えばメルカリの場合、2013年の創業から2018年の上場までの5年間で4回オフィスを移転しています。シェアオフィスの一角を間借りした柳ビルから、雑居ビル2拠点を経て、創業3年目で六本木ヒルズ森タワー18階の約400坪へ。
1つのオフィスで完結させようとせず、成長したら出ていく前提で短期目線で借りるほうが、結果的にコストもリスクも低く抑えられます。
狭いオフィスを最大限活用するレイアウト
ここまで「賃料を削るならまず坪数」と何度かお伝えしてきました。坪数をケチると決めたら、次にやることは決まっています。レイアウトの設計です。
数字だけ見れば「一人当たり3坪あれば快適」と言えるのですが、実際のオフィスは数字どおりにいかないことのほうが多いです。例えば30坪のオフィスでも、柱の位置や窓のある面、エントランスからの動線によって、デスクを置きづらい「死にスペース」が3〜5坪生まれることがあります。広く借りた割に、使い物にならないエリアにお金を払っているケースは珍しくありません。
逆に言えば、レイアウトを工夫すれば、坪数を1〜2割削っても快適性は維持できる、ということ。
坪数を削ることに不安を感じる経営者は多いですが、実は不安の正体は「広さの不足」ではなく「レイアウトの設計不足」であることがほとんどです。坪数を削るなら、その分だけ配置と動線にこだわる。これが狭いオフィスを最大限活用する大原則です。
デスク配置を変えるだけで坪数は2割変わる|島型/対向式/背面式
デスク配置には主に3パターンあり、必要坪数が大きく変わります。
▼デスク配置パターンと必要面積
- 島型(向かい合わせの島を作る):会話しやすいが場所を取る
- 対向式(2列で向かい合う):島型より2割ほど場所をとらない
- 背面式(背中合わせで集中重視):島型より2〜3割ほど場所をとらない
集中業務中心の組織なら背面式、コミュニケーション重視なら島型を選ぶなど、業務スタイルで使い分けます。
柱と窓の位置で「使えない3坪」が決まる|内見時のチェックポイント
物件サイトに「30坪」と書かれていても、実際に使える面積はそれより少ないのが普通です。柱が部屋の真ん中にある物件、窓が一方向にしかない物件、エントランスから執務スペースまでの動線が長く取られている物件などでは、3〜5坪が「死にスペース」になることもあります。
内見時に確認すべきは、坪数の数字より「家具を置ける有効面積」です。柱の位置、梁の出っ張り、コンセントや配線口の位置、窓と入口の位置関係。
これらをチェックして、デスクと会議室を配置できるかをその場でイメージする。同じ30坪でも、有効面積が25坪と28坪では3坪分の差が出ます。
コロナ後の会議室の正解は「小さな会議室を複数」
コロナ禍を経て、会議室設計の正解が変わりました。出社してもミーティング相手がリモートなことが増えたため、大きな会議室を1室持つより、小さな会議室・電話ブースを複数持つほうが稼働率が上がる傾向にあります。
例えば6人用の大会議室1室より、4人用+2人用+電話ブース2つに分散させたほうが、同じ面積でも稼働率が上がります。10人規模のオフィスで6人会議室を持つと、ほとんどの時間「2〜3人で6人席を占有する」状態になり、他の社員が打ち合わせをする場所がなくなる。小分けにすることで、同じ面積から取れる打ち合わせの「枠」が増えます。
通路を削ると什器が入らない|避難動線も違反する
通路は削りやすそうに見えて、実は削れないポイントです。主要動線は1.2〜1.6m、デスク間の副動線は0.9〜1.2mが基準で、これを下回ると人の擦れ違いが困難になります。
ちなみに通路に荷物や什器を置きすぎて避難経路を塞ぐと、消防法違反として是正指導の対象になります。是正に従わない場合は罰金や使用停止命令もありえます。「ちょっと狭くしたほうがデスクが入る」と通路に荷物を置きがちですが、消防検査で引っかかると業務どころではありません。
加えて、什器を搬入する経路と避難動線の確保も法令で求められます。通路を狭くしすぎると、新しい什器が入らなくなったり、消防法違反になる場合もあります。通路は「削る対象」ではなく「死守する対象」と認識を切り替えるのが正解です。
内見10〜15件で初めて「広さ」の感覚がつかめる
坪数の感覚を養うには、10〜15件の内見が必要といわれます。坪単価3万円・2万円・1.5万円、広さ100坪・50坪・30坪を実際に見て初めて、自社に必要な広さがイメージできるからです。
数字だけで「30坪あれば足りるかな」と判断するのは危険です。物件サイトの坪数表記と実際の使用感は、内装や柱の位置で大きく変わります。レイアウト設計を真剣に考える経営者ほど、最初に内見の数をこなしているのが定石です。
賃料以外で削れる費用・削れない費用
坪数の次に何を削るか、何を削ってはいけないか。判断基準を5つのカテゴリで整理します。
オフィス家具は新品で買わない|中古・リースで初期費用が数分の1に抑えられる
オフィス家具を新品でそろえると、10人規模で200〜300万円の出費になります。中古オフィス家具専門店やリースを活用すれば、初期費用は数分の1まで抑えられます。
居抜きオフィス・セットアップオフィスを選べば、家具込みで契約できる物件もあり、初期費用ゼロでスタートできるケースもあります。
共用部のジムやラウンジはほとんど使われない|「あれば便利」は契約しない
レンタルオフィスやサービスオフィスを契約する際、共用部にジム・ラウンジ・バーなどがあると魅力的に見えます。ただ、実際に契約してみると共用部のジムやバーを一度も使わずに退去するケースは少なくありません。
「あれば便利」程度の付帯設備にはコストを払わない判断が正解です。月額数万円の差が、年間で数十万円の差になります。
法人電話は「物」じゃなくて「サービス」になった|クラウド化で複合機もリース
固定電話の代名詞だった黒電話やビジネスフォンは、もはや物として購入する時代ではありません。クラウドPBX(電話番号と通話機能をクラウド上で提供するサービス)を使えば、月額数千円から法人電話が持てます。
ビジネスフォン主装置を購入すると初期費用30〜100万円が必要でしたが、クラウドPBXなら初期費用ゼロ、月額3,000〜5,000円から始められます。番号も複数持てるうえ、スマホで内線が受けられるため、外回り中心のスタートアップとは特に相性がいい構造です。
複合機も購入ではなくリースが主流で、月額1〜3万円程度。FAXも紙の複合機ではなくクラウドFAXに切り替えれば、印刷コストも紙コストも削減できます。
インターネット回線は削れない|ただし高ければ早いわけでもない
オフィスのインフラの中で唯一「削れない」のがインターネット回線です。回線が止まれば業務も止まる以上、ここのケチりは致命傷になります。
ただし、高額な法人回線が必ず速いわけではありません。光コラボレーション(NTT東西の光回線を借り受けて事業者がサービス提供する形式)の事業者は、根本のNTT回線を共有しているため、回線品質は基本的に同じです。差が出るのは、契約・支払い・サポートの窓口がまとまっているか、開通までのスピード、付加サービスの有無です。
法人向けの光回線サービスのなかには、NTT東西の光回線とプロバイダをセットで提供することで契約・支払い・サポートを一本化し、IPoE接続(混雑しにくい次世代の通信方式)の「v6プラス」を標準提供する事業者があります。イツキ光もそうした選択肢のひとつで、ワンストップ提供と料金の分かりやすさが特徴です。
画像:イツキ光
▼回線とプロバイダをワンストップで契約するメリット
- 問い合わせ窓口が1社:トラブル発生時に「回線会社→プロバイダ」と複数会社をたらい回しにされない。業務が止まる時間が短縮できる
- 請求書が1枚:回線料金とプロバイダ料金が別々に届かないため、経理処理の工数が下がる
- 総額が明朗:「結局月いくら払っているか」が見えやすく、コスト管理がしやすい
- 解約・移転がスムーズ:複数会社と個別やり取りする必要がなく、次のオフィスへの引き継ぎも一本化できる
- 別契約より割安になる傾向:セット提供は事業者側の効率化分が料金に反映されやすい
法人の場合、回線トラブルで業務が止まる時間が直接売上に響くため、「品質は光コラボなら基本同じ。差が出るのはv6プラスかどうか、窓口設計とサポート」という観点で選ぶのが合理的です。
セキュリティ・空調を削るのは経営判断ミスのサイン
セキュリティと空調は、削ると経営判断ミスとして跳ね返ります。セキュリティを削れば情報漏洩リスクが、空調を削れば生産性低下と離職リスクが顕在化します。
空調については、コールセンターを対象にした研究で「室温が25℃から28℃に上がると、生産性が約6%下がる」というデータもあります。10人規模で月給30万円の会社なら、夏場の暑さだけで月18万円分の生産性損失が発生する計算です。空調代を月数万円ケチった結果、業績に跳ね返るほうがはるかに損失が大きい構造になっています。
「快適で可能な限り安く」を狙うオフィス設計において、セキュリティ・空調・回線の3つは固定費として確保し、それ以外で削るのが定石です。
オフィスを借りるなら、いつ動き出すべきか
広さや削る項目が決まっても、動き出しのタイミングを間違えると入居日に業務が再開できません。
「2か月後に入居予定」は、もう間に合いません|全体リードタイムは6〜12か月
オフィス入居を2か月後に検討している場合、結論から言うとかなり厳しいスケジュールです。物件契約から入居までの標準的なリードタイムは6〜12か月で、内装工事だけで3〜4か月かかります。
そもそも東京都心5区のオフィス空室率は2025年12月時点で2.22%まで低下しており、希望条件の物件は募集から数週間で決まることも珍しくありません。「2か月後に空き物件を見つけて契約して内装入れて入居」というプランは、現在の市況では物理的に難しいのが実情です。
加えて、旧オフィスの解約予告は6か月前通告が一般的。新旧オフィスを並行して動かす期間も含めると、移転検討は1年前から始めるのが現実的です。
内装工事は3〜4か月|設計と工事を分けると半年に延びる
内装工事は「現地調査→レイアウト設計→内装工事発注→電気・配線工事→什器搬入」の順で進みます。一社で設計から工事まで一括で請け負う業者なら3〜4か月、設計と工事を別会社に依頼する場合は4〜6か月かかります。
ちなみに内装工事費は坪単価10〜20万円、10人規模30坪のオフィスでも300〜600万円の出費になります。設計と工事を分けると、業者間の調整待ちで2か月ほど工期が延びるうえ、設計料が別途発生して結果的に総額も増えがちです。スケルトン物件(内装ゼロの状態)か居抜き物件かで工期と費用は大きく変わるため、スピード重視なら居抜き・セットアップオフィスが最短ルートです。
法人の初期費用は家賃の半年〜1年分|知らないと会社が吹き飛ぶ
法人オフィスの契約では、敷金・保証金として家賃の6〜12か月分を契約時に支払うのが一般的です。月額家賃50万円の物件なら、初期費用だけで300〜600万円が必要になります。
加えて、退去時の原状回復費用(坪単価3〜5万円が相場)も契約時に確認しておくべき項目です。知らずに契約すると、退去時に数百万円の追加負担が発生する可能性があります。
回線手配は物件契約と同時に動かす|意外と時間のかかる開通、遅れると移転日から業務できない
オフィスの広さや内装より見落とされがちなのが、インターネット回線の開通スケジュールです。光回線の標準的な工事リードタイムは申込から開通まで2〜4週間、繁忙期や東京23区の大規模ビルでは1か月以上かかることもあります。
移転日に回線が間に合わないと、業務再開できずに数日〜数週間の機会損失が発生します。回線工事は物件契約と同時に手配するのが理想で、遅くとも移転1か月前には申込を済ませておく必要があります。
法人オフィスの回線では、申込当日にインターネットを利用開始できる「スピード開通」サービスや、開通までの間モバイルWi-Fiを無料貸出してくれる事業者を選ぶと、空白期間のリスクを抑えられます。先ほど触れたイツキ光もそうした選択肢のひとつで、スピード開通オプション(22,000円・税込)を申し込めば、前日〜当日朝9時までの受付で、最短当日もしくは翌日に光回線の開通工事を実施してくれます。通常2週間〜1か月かかる光回線の工事を、当日中に圧縮できるサービスは少数派です。
画像:イツキ光
加えて、開通までに時間がかかる場合はモバイルWi-Fi(イツキモバイル)を無料でレンタルできるオプションも用意されています。データ20GBまたは無制限の端末を、申込から1〜2週間ほどで届けてくれる仕様で、移転日と開通日にズレが出ても業務を止めずに繋ぐことが可能です。なおスピード開通オプションは、NTTフレッツ光の提供エリア内であること、テレビサービスと同時申込ではないことが利用条件で、工事が完了しなかった場合の料金請求はありません。
引越し業者の手配は2〜3か月前から|土日早朝指定の物件も多い
什器搬入と引越し作業は、内装工事完了後に進めます。引越し業者の手配は2〜3か月前から始めるのが標準で、新オフィスの搬入経路・養生・搬入時間帯(土日早朝指定があるビルが多い)の調整も並行で進めます。
旧オフィスの原状回復工事も同時並行のため、移転プロジェクト全体では6か月〜1年のリードタイムを見込むのが現実的です。
よくある質問
業種ごとに必要な広さは違う?
業種によって必要な広さは変わります。外勤営業中心の企業は一人当たり2坪程度で済む場合があり、弁護士・会計事務所など機密性を重視する業態では4坪以上が好まれる傾向にあります。
エンジニアなど作業環境を充実させる職種は広めの設計が向き、来客頻度の高い業種は応接スペースを別途確保する必要があります。
スタートアップでも入居審査に通る?
賃貸オフィスの入居審査では、会社の信用情報・資本金・代表者の個人信用が確認されます。創業直後で実績が少ない場合、保証会社の利用を求められたり、敷金を多めに積むことで通る場合もあります。
レンタルオフィス・セットアップオフィスのほうが審査が緩い傾向にあり、創業期はそうした物件から始める選択肢もあります。
居抜きオフィスとセットアップオフィスの違いは?
居抜きオフィスは前テナントが残した内装・什器をそのまま使う物件です。一方、セットアップオフィスは、ビルオーナーが内装・家具・通信設備をあらかじめ整えて提供する物件のこと。
どちらも内装工事費を抑えられますが、セットアップオフィスのほうが品質が安定しており、すぐ入居できる即決性があります。
自宅・バーチャル・コワーキングから移るタイミングは?
判断基準は採用・来客・機密性の3つです。社員を採用する段階、来客対応が定期的に発生する段階、機密性の高い情報を扱う段階のいずれかに該当したら、賃貸オフィスへの移行を検討するタイミングです。
バーチャルオフィスのままだと、金融機関での資金調達・口座開設が難しくなったり、メンバー間のコミュニケーションが希薄になったり、貸し会議室代でかえってコストがかさんだりする傾向もあります。人を増やすフェーズではバーチャルからの卒業を視野に入れたほうがスムーズです。
まとめ|削るならどこ、削ってはいけないのはどこ
オフィスの広さは「人数×3〜4坪」を起点に、稼働率と削れる項目を加味して算出するのが王道です。
▼この記事のまとめ
- 賃料を削る順番:坪数→築年数→路線→立地(立地は最後まで死守)
- 坪数の下限:法律1.4坪/推奨2坪/快適3坪
- 削りすぎ後悔ライン:一人当たり2坪を切ると物理的な被害、増員見込みで大箱を借りると初期費用で資金が圧迫
- 賃料以外で削れる:什器(中古・リース)/共用部の付帯設備/法人電話(クラウド化)
- 削ってはいけない:インターネット回線/セキュリティ/空調
- スケジュール:物件契約から入居まで6〜12か月、2か月後の入居検討はかなり厳しい
広さや内装の検討が進んでも、見落とされやすいのが移転日から業務を再開するための通信環境です。インターネット回線の工事リードタイムは申込から2〜4週間、繁忙期は1か月以上かかるため、間に合わなければ移転後の機会損失につながります。
法人向けの光回線のなかには、最短即日開通やモバイルWi-Fi無料貸出など、移転スケジュールに合わせたオプションを用意している事業者があります。本記事で触れたイツキ光もそうした選択肢のひとつで、NTT東西の光回線とプロバイダをワンストップで提供し、契約・支払い・サポートの窓口が一本化されている点が特徴です。広さが決まったら、回線手配も同時に動かしておくとスムーズに進みます。