カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が商品・サービスを認知してから購入、利用、アフターフォローに至るまでの一連の体験価値を指します。
「顧客満足度は悪くないのに、なぜか解約率が下がらず売上が伸び悩んでいる…」
そんな声は少なくありません。
実は、NPS(顧客ロイヤルティ(信頼や愛着)を測る指標)でトップを走る企業は競合他社の2倍の売上高成長率を達成しており、CX戦略の有無が解約防止と収益拡大を大きく左右しているのです。
▼今回の記事でわかることは・・・
- 選ばれ続ける企業が実践しているCX戦略の本質
- CX向上が売上・LTV・リピート率に直結する仕組み
- BtoB企業がCX戦略で成果を出すためのロードマップ
本記事では、カスタマーエクスペリエンス(CX)の基礎から実践的な改善ステップまで、チャーンレートを劇的に下げて顧客との長期的な関係を構築するための戦略を具体例とともに解説します。
目次
選ばれ続ける企業が実践しているカスタマーエクスペリエンス(CX)戦略とは?
「商品・サービスの品質には自信があるのに、なぜ顧客が離れていくのか」とお悩みではありませんか。
その原因は、顧客が求める価値が「モノ」から「コト」へとシフトしていることにあります。
ここではCX戦略の基本概念と、経営に与えるインパクトについて解説します。
カスタマーエクスペリエンス(CX)が経営に与える3つのインパクト
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、顧客が商品・サービスを認知してから購入、利用、アフターフォローに至るまでの一連の体験価値を指します。
優れたCXは経営に対して「LTV(顧客生涯価値)の向上」「リピート率の改善」「口コミによる新規顧客獲得」という3つのインパクトをもたらすのです。
ベイン・アンド・カンパニーの調査によると、NPSでトップを走る企業は競合他社の2倍の売上高成長率を達成していることが明らかになっています。
つまり、CXへの投資は単なるコストではなく、収益に直結する経営戦略と言えるでしょう。
引用元:NTTコム オンライン
顧客満足度(CS)との決定的な違い|感動体験へのシフト
顧客満足度(CS)は商品購入やサービス利用時に感じる「満足感」を測る指標であり、CXの一部に位置づけられます。
一方、CXは購入前の認知・検討段階から購入後のサポートまで、顧客と企業のあらゆる接点における体験全体を対象とする点が決定的な違いです。
CSでは「期待通りだった」という評価にとどまりますが、CXでは「期待を超える感動体験」を提供することで顧客ロイヤルティを高めることを目指します。
Salesforceの調査では、86%の消費者が「より良い顧客体験のためなら追加料金を払っても良い」と回答しており、感動体験への投資価値は明確でしょう。
BtoB企業におけるCX戦略の成功パターン
BtoB企業においてもCX戦略は極めて重要な経営課題となっています。
BtoBでは購買検討期間が長く、複数の意思決定者が関与するため、各タッチポイントでの体験品質が最終的な契約に大きく影響するのです。
成功している企業に共通するパターンは、「営業担当の対応品質の標準化」「情報提供の一貫性」「導入後のサポート体制の充実」という3つの要素を徹底していることにあります。
実際に、CX改善に積極的に取り組んでいる企業では退会率の低下や入会率の上昇など、数値として成果が現れているケースが多く報告されています。
引用元:エモーションテック
カスタマーエクスペリエンス向上で売上が変わる仕組み
CX向上と売上の関係性を理解することは、経営判断において非常に重要です。
なぜ顧客体験への投資が収益に直結するのか、その仕組みを具体的なデータとともに解説します。
価格競争から脱却できる差別化の本質
CX戦略の最大のメリットは、価格以外の価値で顧客から選ばれる企業になれることです。
商品やサービスの機能・性能だけでは競合との差別化が難しい現代において、「心理的・感情的な価値」を提供できる企業が持続的な競争優位を築いています。
スターバックスが「コーヒーを飲む」という行為に「居心地の良い空間」「心地よい接客」というCXを加えることでブランド価値を高めているのが好例でしょう。
このように、CXを差別化の軸に据えることで、価格競争に巻き込まれることなく適正な利益を確保できるようになります。
リピート率・LTVを最大化するCXの要素
リピート率とLTVを高めるCXには、「期待を超えるサービス体験」「パーソナライズされたコミュニケーション」「スムーズな問題解決」という3つの要素が不可欠です。
NTTコム オンラインの調査によると、NPSの推奨者は批判者と比べて年間購入金額が3.1倍に達することが明らかになっています。
つまり、顧客ロイヤルティを高めることで、1人あたりの収益貢献度が大幅に向上するのです。
新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍のコストがかかるという「1:5の法則」を踏まえると、CX向上によるリピーター育成は収益性改善の最短ルートと言えるでしょう。
引用元:Ninout
顧客行動データから見える改善の優先順位
CX改善を効果的に進めるには、顧客行動データを分析して優先順位を明確にすることが重要です。
闇雲に施策を打っても効果は限定的であり、まず「どこで、なぜ、どんな理由で顧客が離脱しているのか」というボトルネックを特定することが鉄則となります。
具体的には、チャーンレート、NPS、コンバージョン率、直帰率などの指標を定点観測し、数値の変化と施策の相関を検証していきます。
データドリブン(データに基づいて意思決定を行う考え方や手法)なアプローチを採用した企業では、客単価が前年比1.3%向上、辞退率が5%改善といった具体的な成果が報告されています。
引用元:エモーションテック
失敗企業と成功企業を分けるCX戦略の実践ポイント
結論から言うと、CX戦略の成否を分けるのは「顧客視点の徹底度」です。
成功企業は顧客との接点すべてを体験設計の対象として捉え、組織全体で一貫した価値を提供しています。
ここでは具体的な成功事例と実践ポイントを解説します。
Amazon・業界トップ企業のCX戦略から学ぶ本質
CX戦略で成功している企業に共通するのは、「顧客中心主義」を経営理念の根幹に据えていることです。
Amazonは「地球上で最もお客様を大切にする企業」をミッションに掲げ、ワンクリック購入や迅速な配送、充実したレビュー機能など、購買体験のあらゆる場面で顧客の利便性を追求しています。
また、ザッポスでは過去に顧客を感動させた対応を「感動レシピ」として組織内で共有し、経験の浅い社員でも高品質な顧客対応ができる仕組みを構築しているのです。
これらの企業が示す本質は、CXを一部門の取り組みではなく、全社的な経営戦略として位置づけている点にあります。
顧客接点ごとに最適化すべきCX要素とは?
CX向上を実現するには、顧客との接点(タッチポイント)ごとに最適な体験を設計することが不可欠です。
購買前の「認知・検討段階」では情報のわかりやすさと信頼性、購買時には「スムーズな手続き」と「丁寧な対応」、購買後は「迅速なサポート」と「継続的なフォロー」がそれぞれ重要な要素となります。
BtoBにおいては、Webサイトでの情報提供から営業担当の対応、導入後のカスタマーサクセスまで、各接点の体験品質が契約継続に直結するでしょう。
各タッチポイントでフィードバックを収集・分析し、改善領域を特定することで、カスタマージャーニー全体の強化につながります。
社内で共有すべきCX向上研修のポイント
CX戦略を成功させるには、現場スタッフから経営層まで全員が顧客体験の重要性を理解し、同じ方向を向いて行動することが必要です。
研修で共有すべきポイントは、「自社が目指すCXの姿の明確化」「顧客視点での思考方法」「権限委譲による柔軟な対応」の3つとなります。
CXに取り組んでいる企業では、現場社員への権限委譲を積極的に進めることで、相手に応じた接客が可能となり高い顧客評価を得ているケースが多いのです。
組織文化として定着させるためには、適切なKPIの設定や評価制度の導入など、仕組み化を併せて進めることが成功の鍵となるでしょう。
引用元:flier
BtoB企業がCX戦略で成果を出すためのロードマップ
NTTコム オンラインの調査によると、CX向上の取り組みで成果を出せている企業は全体の17.6%にとどまっています。
しかし、成果創出層の93.2%が取り組みを継続したいと回答しており、正しいアプローチで進めれば確実に成果につながることがわかります。
ここでは、BtoB企業がCX戦略で成果を出すための具体的なロードマップを解説します。
引用元:NTTコム オンライン
まず着手すべきCX改善の3ステップ
CX改善の第一歩は、「現状把握」「課題特定」「優先順位の決定」という3つのステップを順番に進めることです。
まず顧客満足度調査やNPS調査を実施して自社の現状を定量的に把握し、次にカスタマージャーニーマップを作成して顧客が不満を感じているポイントを特定します。
そして、影響度と改善難易度のマトリクスで優先順位を決定し、クイックウィン(すぐに実施できる施策)から着手していくのが効果的でしょう。
いきなり大規模な施策に取り組むのではなく、小さな成功体験を積み重ねることで組織全体のモチベーションを高めることができます。
顧客データを活かしたCX最適化の進め方
CX最適化を継続的に進めるには、顧客データを収集・分析・活用する仕組みの構築が不可欠です。
具体的には、NPS、チャーンレート、LTV、顧客努力指標(CES)などのKPIを設定し、月次や四半期ごとに定点観測していきます。
また、VOC(顧客の声)を収集するためのアンケートツールやテキストマイニングツールを活用することで、数値だけでは見えない顧客の本音を把握できるようになるでしょう。
重要なのは、データを集めるだけで終わらせず、PDCAサイクルを回して改善施策に確実に反映させることです。
外部パートナーとの連携で加速するCX戦略
CX戦略を自社だけで完結させようとすると、リソースやノウハウの不足から成果が出るまでに時間がかかるケースが少なくありません。
外部パートナーと連携することで、専門的な知見の活用、客観的な視点での課題発見、施策実行スピードの向上といったメリットが得られます。
特に、カスタマージャーニーマップの作成支援、NPS調査の設計・分析、CRMやMAツールの導入・運用支援などは、専門家の力を借りることで精度と効率が大幅に向上するでしょう。
自社のリソース状況と目指すゴールを踏まえ、どの領域で外部の力を活用するかを戦略的に判断することが成功への近道となります。
カスタマーエクスペリエンス戦略で企業の未来を切り拓く
顧客満足度は高いはずなのに解約が止まらない、価格競争から抜け出せないという悩みを抱える企業は多いのではないでしょうか。
その解決策は、カスタマーエクスペリエンス(CX)を経営戦略の中核に据え、顧客との全接点で「期待を超える体験」を提供し続けることにあります。
まずは現状のCXを可視化し、優先度の高い改善ポイントから着手してみてください。
小さな成功体験を積み重ねることで、チャーンレートの改善とLTVの向上という確かな成果につながっていきます。
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