介護現場の人材不足を解消する方法は、人材紹介会社を使うことだけではありません。介護ロボット、ICTの導入など、様々なアプローチを組み合わせて使うことで、コストを抑えながら人手不足を解消することができます。
内閣府の資料によると、介護関係職種の有効求人倍率は令和5年で4.02倍に達し、限られた人材を介護施設同士で奪い合う状況が続いてきました。
引用元:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
▼本記事でわかること
- 介護現場の人手不足を解消する4つのアプローチ
- 各アプローチで実際にどれだけ成果が出たのか
- 自社で採用業務の対応が難しい場合における解決策
業務を効率化して定着させ採用負担を減らす
介護現場の人手不足は、募集がうまくいかないことだけが原因ではありません。採用してもすぐ辞められれば、また募集をかけ直すことになり、いつまでも採用に追われてしまいます。この悪循環を断つ鍵が、職員の負担を減らして辞めない職場環境を整備することだと言えます。
まずは業務の効率化で現場の負担を軽くし、定着を改善するアプローチから見ていきましょう。
介護ロボット・見守り機器で残業と離職を減らす
はじめに、残業・離職防止の観点から効果を実感できるのが、介護ロボットや見守り機器で職員の負担を物理的に減らすことです。厚生労働省の事例集では、見守りセンサーなどを導入したとあるホームが常勤介護職員の残業を月252.5時間から92時間に減らしたと紹介されています。
その結果、過去6年間で常勤介護職員の離職率は0%、介護事故も60%削減と、定着が大きく改善しています。別の施設では見守りシステムで定時巡視を1日5時間から0時間まで減らし、夜間の負担を大幅に軽減しました。
引用元:厚生労働省「令和5年度 介護職員の働きやすい職場環境づくり 内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰 取組事例集」
機器導入で残業も離職も減る!
介護記録・日報のICT化で現場の手間を削って負担を減らす
次に、日々の業務負担の軽減という観点から効果を発揮するのが、介護記録や日報のICT化で日々の事務作業を減らすことです。介護ソフト「ファーストケア」を導入した富山県のリハ・ハウス来夢では、看護職や機能訓練指導員の業務を1日あたり約60分削減しました。
介護記録ソフトの導入で1人あたりの記録時間が1日45分から30分へと短縮でき、月に換算することで7.5時間の削減になった施設もあります。こうした事務の削減は派手ではありませんが、現場の時間を確実に生み出すのではないでしょうか。
引用元:介護ソフト「ファーストケア」導入事例(リハ・ハウス来夢)
記録のICT化で時間を生む!
勤務の柔軟さで定着率を上げる
効率化と並んで定着を支えるのが、働き方そのものの見直しです。
介護労働安定センターの実態調査では、定着や離職防止のために最も多くの事業所が行っている方策が「勤務日時の変更をしやすい職場づくり」で、74.7%にのぼりました。実際に介護職員の離職率は12.4%まで下がり、2年連続で低下しています。業務改善で生まれた余力を休みやシフトの柔軟さとして還元することが、介護職員の定着や離職防止につながるのではないでしょうか。
引用元:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」
勤務の柔軟さが定着を生む!
最適な求人広告媒体を選び、求人票を磨いて応募を増やす
▼求人媒体と求人票の関係性の整理
- 求人媒体=釣り場
- 求人票=餌・ルアー
狙う魚(求職者)に合わせて最適な釣り場(媒体)を選び、その魚が思わず食いつきたくなるようにルアーや餌(求人票のキャッチコピーや待遇)を磨き上げる、というイメージです。
同じ待遇の介護施設であっても、最適な求人媒体を選び、内容をブラッシュアップすることで応募数は大きく変化します。これこそが、コストを抑えた効率的な採用活動の第一歩となります。ここで、介護の求職者が特に気にする項目を押さえて確認しておきましょう。
▼介護の求人で特に注目される項目
- 夜勤の有無や回数(夜勤専従や日勤のみなど働き方の幅)
- シフトや休みの取りやすさ、残業の実態
- 職場の人間関係やチームの雰囲気
- 未経験・無資格でも始められるか、資格取得の支援
- 利用者との関わり方と1日の仕事の流れ
- 人員体制と一人あたりの負担
求人条件を見直すと採用率が上がる
応募が来ないとき、まず見直したいのが求人条件です。滋賀労働局の調査では、採用率向上のために、最も多くの事業者が変更したのは賃金の引き上げ(57.4%)でした。
一方で、採用に結びついた割合が78.6%と最も高かったのは、「働きやすい勤務時間」で賃金引き上げの67.7%を上回っています。
▼求人条件の変更と採用に結びついた割合(滋賀労働局)
| 変更した条件 | 変更した施設 | 採用に結びついた割合 |
| 働きやすい勤務時間 | 25.9% | 78.6% |
| 賃金の引き上げ | 57.4% | 67.7% |
| 資格・経験要件の緩和 | 38.9% | 57.1% |
条件の見直しが採用率を上げる!
求人写真でリアルな職場を見せる
媒体に載せる写真も、応募を左右する大きな要素です。ディップの調査では、求職者の約6割が求人サイトの写真を「10枚以上」見たいと答え、「写真は無くても良い」はわずか3.4%でした。不満の上位は「使い回しで実際の職場ではない」が71.8%、「素材画像でリアルな人物が写っていない」が68.1%で、作り物の写真は敬遠されています。
採用支援各社の集計でも、写真の有無で応募数が1.5〜2倍変わるとされ、写真を差し替えただけで応募が倍増した例も報告されてきました。職員と利用者が向き合う場面など、働く姿が伝わる写真ほど応募につながりやすいのではないでしょうか。
引用元:ディップ株式会社「求職者の意識調査(求人写真について)」
引用元:Offers HR Magazine「求人画像の選び方と応募率」
写真は作り物より現場の姿!
採用サイトや自社発信で応募前の不安を取り除く
募集を増やす前に、応募者から見た自社の印象を整えることも欠かせません。応募者は応募の前に自社を調べ、応募のしやすさや口コミまで見ており、ここで取りこぼすと採用につながりません。
応募フォームは項目を減らすほど応募が増える
採用サイトを整えても、応募フォームが面倒だと最後のひと押しで取りこぼします。求人サイトの調査では、入力の必須項目が1つ増えるごとに応募率が約5%下がると報告されました。
たとえば必須5項目で月100人だった応募が、6項目で95人、10項目では75人まで減る計算になります。名前と連絡先だけで応募できるようにするなど、入力の手間を削るだけで取りこぼしを防げるのではないでしょうか。
引用元:求人サイト構築メイド「応募が来ない要因と対策(応募フォームと応募率)」
フォームは短いほど応募が増える!
悪い口コミで応募者は静かに去る
求職者が見ているのは、自社が発信する情報だけではありません。エルテスの調査では、求職者の約70%が検討先企業のネガティブ情報を見た経験があり、自分から検索した人も32.6%いました。
ネガティブ情報を検索した人のうち、42.9%が「志望度が下がった」、10.7%が「入社を取りやめた、または応募しなかった」と答えています。良くない口コミは静かに辞退を生むため、口コミへの対応と現場のリアルな声の発信で不安を打ち消したいところではないでしょうか。
引用元:株式会社エルテス「求職者のネガティブ情報閲覧に関する実態調査」
悪い口コミは黙って辞退を生む!
採用サイトで見られる項目はほぼ決まっている
発信の最後にたどり着く採用サイトでは、求職者が実際に見る項目を押さえることが近道になります。株式会社ONEの調査では、採用サイトがあるだけで企業への好感度が62.4%に上がり、閲覧後に応募意欲が高まった人も40%いました。
見られる情報には順番があり、キャリタスの調査では本選考の判断で最も見られるのは「待遇・福利厚生・ワークライフバランス」で、7割超(70.2%)を占めています。仕事内容や待遇を求職者が見る順に具体的に載せた採用サイトに整えたいなら、制作の段階から相談してみてはいかがでしょうか。
▼採用サイトで求職者が知りたい情報の順位(株式会社ONE)
| 順位 | 知りたい情報 |
| 1位 | 仕事内容 |
| 2位 | 企業情報 |
| 3位 | 福利厚生 |
| 4位 | 具体的な働き方 |
| 5位 | 募集要項 |
引用元:株式会社ONE「企業の採用サイトに関する意識調査(2021年・540名)」
引用元:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ「採用ホームページに関する調査」
見られる項目から先に作る!
外部の採用支援に運用を任せる
「最適な求人広告媒体を選び、求人票を作り込んで運用する」
これらをすべて自社で行おうとすると、日々の業務に追われ、どうしても片手間の作業になってしまいがちです。
そんな時は、採用実務を外部に委託する「採用代行(RPO)」という選択肢もあります。
採用代行で1人あたりの単価が下がる
採用代行(RPO)は、外注費こそ増えるものの採用単価を下げられる場合があります。ある試算では、月30万円の外注費が増える一方で、人事の作業削減により内部人件費が25万円減りました。
採用数が3名から5名に増えた結果、1人あたりの採用単価は約13.3万円から約9万円へと下がっています。外注費だけを見ると割高に思えても、人事担当者の業務負荷を軽減しつつ、直接採用にも繋げられるため、高額な人材紹介会社を利用するよりも、はるかにコストパフォーマンスの良いサービスではないでしょうか。
引用元:スマートキャンプ株式会社「BOXIL Magazine|採用代行(RPO)の費用相場と効果に関する調査」
外注でも単価は下げられる!
手間のかかる採用業務を任せて、採用のコア業務に集中できる
採用代行が広がっているのは、手間のかかる作業をまとめて任せられるからです。複数媒体の掲載や原稿づくり、スカウトの送信を社内だけで続けるのは、簡単ではありません。
面接調整や応募者対応といった工数のかかる業務を外部に任せれば、人事が戦略づくりや面接に集中できます。手が回らない作業ほど、外部の力を借りる価値があるのではないでしょうか。
手間のかかる運用を任せる!
介護に強い支援は現場の声から求人を作る
任せるなら、介護や医療の現場を理解した支援会社を選びたいところです。ある介護施設は、自社だけでは採用を回しきれず、医療と介護に強い採用支援の株式会社Allwaysに実務を任せました。
複数媒体の運用や原稿の書き換え、スカウト、学校開拓まで任せた結果、人材紹介を使わずに4ヶ月半で73名を採用できています。同社は現場の声から求人記事をつくるため、施設に採用のノウハウを残しながら任せられるのではないでしょうか。
現場を知る支援に任せる!
よくある質問
紹介会社を使わずに介護現場の人手不足は解消できますか?
紹介会社を使わずに介護現場の人手不足を解消することは十分に可能です。本記事にて紹介した4種類のアプローチは、いずれも介護現場の人手不足に対して一定のポジティブな効果が期待できます。
介護職を1人採用するのにかかる費用の相場は?
採用方法によって費用は大きく変わり、人材紹介会社を使うと1人あたり年収の20%〜30%(70万円〜100万円)ほどの紹介料がかかります(※年収400万円・介護福祉士を採用した場合)。
一方でハローワークや社員の紹介、求人媒体の無料掲載などを組み合わせれば、紹介料をかけずに採用できる場合も少なくありません。コストと採用数のバランスを見ながら使い分けるのが現実的です。
未経験の人を採用しても戦力になりますか?
育てる前提であれば、未経験者も十分に戦力になります。介護は資格がなくても始められる業務が多く、働きながら資格取得を目指せる仕組みも整ってきました。人手が足りない今は、経験者だけを待つより未経験者を採用して育てるほうが、現実的な選択肢になりやすいでしょう。
まとめ
介護職の採用は決して人材紹介会社のみに頼る必要はありません。本記事で紹介したアプローチを組み合わせることでコストを抑えた採用活動が実現できます。
▼この記事のまとめ
- 介護ロボットやICTの導入で、介護職員の業務負担を軽減し、人材が定着する環境を作る
- 適切な求人広告媒体の運用と、自社採用サイトを作り込み、人材紹介会社のみに頼らない採用活動を行う
- 採用業務において自社で対応できない部分は、採用支援会社に任せてみる
ここまで読んで、これだけのアプローチを自社だけで続けられるか不安に感じた方もいるかもしれません。複数媒体の運用や発信、学校開拓までまとめて任せられる採用支援を使えば、紹介会社に頼らずコストを抑えた採用を続けられます。自社に採用のノウハウを残しながら進めたい方は、一度相談してみてください。