サイバーエージェントが成功した理由は、人材育成と長期投資を軸にした独自の経営戦略にあります。
創業来28期連続増収を達成し、時価総額1兆円を突破した同社には、他社が真似できない仕組みがあります。
▼本記事でわかること
- 能力より「一緒に働きたい人」を採用し続けた
- 赤字でも将来性のある事業に投資し続けた
- 時代の変化を先読みして事業転換を続けた
本記事を読めば、サイバーエージェントの経営戦略から学べる成長のヒントが明確になります。
マーケティング戦略の見直しや組織力強化でお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
弊社では、オウンドメディアを軸にした企業のマーケティング支援を行っております。
貴社の課題に合わせて、最適な施策をご提案いたします。
目次
サイバーエージェントが成功した理由
サイバーエージェントの成功には、3つの一貫した経営方針があります。
これらの方針を理解することで、自社の成長戦略のヒントが見えてきます。
能力より「一緒に働きたい人」を採用し続けた
サイバーエージェントの採用基準は、スキルや経験よりも人間性を最優先しています。
同社が掲げる採用方針は「素直で良い人」「能力の高さではなく一緒に働きたい人」です。
▼採用で重視する3つのポイント
- 素直に他人の意見を聞ける柔軟性
- 周囲に良い影響を与える人間力
- 変化に対応できる適応力
採用は人事部だけの仕事ではなく、全社員が関わる仕組みになっています。
社員の採用への関与度を5段階で評価する「Rグレード」制度を設け、昇格時にはこの評価を社内報で公開しています。
書類選考や適性検査を行わず、複数回の面接と職場体験を通じて企業文化とマッチする人を選ぶ方針です。
この採用戦略により、変化の激しいインターネット業界で柔軟に対応できる組織が作られました。
一緒に働きたいかが最優先!
赤字でも将来性のある事業に投資し続けた
サイバーエージェントは、短期的な利益よりも長期的な成長を優先する投資戦略を取り続けました。
動画配信サービス「ABEMA」では、莫大な赤字を出しながらも10年間投資を続けています。
| 年度 | 営業損益 |
| 2020年度 | 163億円の赤字 |
| 2021年度 | 140億円の赤字 |
| 2022年度 | 130億円の赤字 |
| 2023年度 | 123億円の赤字 |
| 2025年度第1四半期 | 14億円の黒字 |
4年間で総額556億円の営業赤字を計上しましたが、継続的な投資により2025年度に黒字転換を達成しました。
広告事業とゲーム事業で得た収益をメディア事業に投資する循環モデルが、この戦略を支えています。
藤田晋社長は「営業利益に寄与するフェーズにいよいよ入ってきた」と決算説明会で語り、長期投資の成果を強調しました。
10年投資して黒字化達成!
時代の変化を先読みして事業転換を続けた
サイバーエージェントは、市場の変化を見極めて大胆な事業転換を実行してきました。
最も象徴的なのが、2009年頃に実行したガラケーからスマートフォンへの大胆なシフトです。
当時はまだガラケーが主流でしたが、同社はいち早くスマホ市場の成長を見込んで事業をシフトしました。
▼主な事業転換の歴史
- 1998年:インターネット広告代理店として創業
- 2004年:ブログサービス「Ameba」開始
- 2009年:スマートフォン広告に注力開始
- 2013年:ゲーム事業本格化
- 2016年:動画配信「ABEMA」開始
創業来28期連続増収を達成し、時価総額は1兆円を突破しました。
変化対応力を強みに、常に新しい事業を立ち上げて成長軌道に乗せてきた実績があります。
インターネット業界の急速な変化に対応し、新しい事業を次々と成功させてきた経営手腕が評価されています。
サイバーエージェントが創業期から続けてきたこと
サイバーエージェントには、創業期から変わらず続けている独自の人材育成制度があります。
若手の大胆な抜擢と失敗を恐れない文化が、組織の成長を加速させています。
新卒1-3年目を子会社社長に抜擢して経営者を育てる
サイバーエージェントは、若手社員を子会社の社長に登用する「新卒社長」制度を続けています。
社員数が500人程度になった2003年に初めて新卒社員を子会社社長に任命して以来、延べ50人以上の新卒社長が誕生しました。
入社1年目から3年目までの社員が、実際にキャッシュの判断や意思決定を担う経営経験を積むことができます。
▼新卒社長が生まれる仕組み
- あした会議:役員がチームを組み新規事業案を提案する経営会議
- Cycom:社員・内定者が新規事業プランを提案できるコンテスト
- YMCAあした会議:20代若手が社長に提案する経営会議
藤田社長は「肩書はタダ」という考え方のもと、若手を大胆に重要ポジションに任命してきました。
新卒2年目でマネージャー、入社直後に子会社社長となる事例も珍しくありません。
抜擢の基準は明文化されていませんが、壮大な目標と愚直な実行力を持つ人材が選ばれる傾向にあります。
実際に内定者時代にアプリを開発して50万ダウンロードを達成し、21歳で代表取締役社長に就任した事例もあります。
若手でも経営者になれる!
失敗した社員にセカンドチャンスを与える文化を作った
サイバーエージェントには、挑戦して失敗した社員を支援する「敗者復活」の仕組みがあります。
新規事業に挑戦して失敗しても、次のチャンスが与えられる文化が根付いています。
| ステップ | 内容 |
| 1. ねぎらう | 挑戦したこと自体を認め、感情に寄り添う |
| 2. 本人の希望を聞く | 次に進みたい方向を尊重し、配置を決める |
| 3. フォローする | 面談や声掛けを継続し、心が折れないよう支える |
事業が失敗しても「よくやった」とまず感情面でねぎらうことを重視しています。
その後、本人の希望を聞いて元の部署への復帰や新たな挑戦を選ばせる仕組みです。
定期的なフォローアップを続けることで、離職を防ぎつつ再起を支援します。
「挑戦と安心はセット」という方針のもと、失敗を恐れずチャレンジできる環境が整えられています。
実際に1億円の損失を出した社員が、その経験を活かして次のプロジェクトで成功した事例もあります。
失敗も成長の糧!
サイバーエージェントが成熟期に挑戦したこと
成熟期を迎えたサイバーエージェントは、さらなる成長に向けて3つの大胆な挑戦を続けています。
これらの挑戦が、次の10年の成長基盤を作っています。
556億円赤字のABEMAに10年投資し続けた
サイバーエージェントは、動画配信サービス「ABEMA」に10年間投資を続け、2025年に黒字化を達成しました。
2016年の開局以来、累計で莫大な赤字を計上しながらも投資を止めませんでした。
▼ABEMAが成功した3つの要因
- スポーツや音楽番組のリアルタイム配信で視聴者を拡大
- AI技術を活用した効率的なコンテンツ制作
- 外部パートナー連携でコンテンツを拡充
週間アクティブユーザーは2,847万人に達し、社会的インフラとして機能しています。
特にAI技術の開発では、テレビ局からも注目される独自のツールを開発しました。
映像制作の効率化やコンテンツ最適化にAIを活用し、他社が真似できない競争優位を築いています。
FIFAワールドカップの全試合無料配信など、大型コンテンツへの積極投資も視聴者拡大に貢献しました。
広告収入と有料プラン「ABEMAプレミアム」の両輪で収益化を進め、開局10年で黒字転換を実現しています。
10年かけて社会インフラに!
ウマ娘で確立した「IP創出→メディア展開」モデル
サイバーエージェントは、ゲーム「ウマ娘」を起点としたIP創出モデルで大きな成功を収めました。
実在する競走馬を美少女キャラクター化したメディアミックスコンテンツとして、幅広い展開を実現しています。
| 展開領域 | 具体的な施策 |
| ゲーム | スマホ・PC向けゲームで800万ダウンロード達成 |
| アニメ | テレビアニメ化、劇場版アニメ制作 |
| グッズ | フィギュア開発、関連商品展開 |
| リアルイベント | ライブイベント、コラボレーション企画 |
リリース4ヶ月で800万ダウンロードを達成し、2021年には同社の時価総額1兆円突破に貢献しました。
この成功体験をもとに、IPを育てる力と展開する力をグループ内に蓄積しています。
現在は「現代版トキワ荘」と呼ばれる漫画家支援施設を設立し、新たなIP創出に取り組んでいます。
選ばれた19人の漫画家に居住費・光熱費・生活費を無料で提供し、制作に没頭できる環境を整備しました。
原作からマネタイズまで一気通貫できる体制を構築し、次のヒットIP創出を目指しています。
採用で「トータルの魅力」を重視してブランド力を高めた
サイバーエージェントは、採用活動を通じて企業ブランドを高める戦略を取っています。
単に優秀な人材を集めるだけでなく、会社の魅力を社会に発信する機会として採用を位置付けています。
▼採用ブランディングの施策
- 就活チャンネルで現場責任者が「こんな人と働きたい」を発信
- 中途向けイベントを翌日までにレポート化してオンライン提供
- 社員紹介コーナーに若手から役員まで80人以上を掲載
採用と広報をセットにして、多くの人に興味を持ってもらう仕組みを作っています。
企業文化をリアルに伝えるため、「ぶっちゃけ感」を重視しました。
出戻り採用も積極的に受け入れ、社外に出た人が戻ってくる体制があります。
外を見た上で帰ってくる社員は覚悟とロイヤリティが高く、貴重な戦力です。
産休からの復職支援も充実させ、ママ社員が安心して働ける環境を整備しています。
多様な働き方を受け入れる柔軟性が、採用力とブランド力の向上につながっているのです。
企業の魅力を発信!
サイバーエージェントのビジネスモデルと収益の仕組み
サイバーエージェントは、明確な収益構造を持っています。
安定事業で稼ぎ、成長事業に投資する循環が成功の鍵です。
広告とゲームで稼いでメディアとIPに投資する
サイバーエージェントは稼ぐ事業と育てる事業を明確に分けています。
広告事業とゲーム事業で安定収益を確保し、メディア&IP事業に投資する仕組みです。
| 事業 | 役割 | 売上比率 |
| 広告事業 | 安定収益を生み出す | 55% |
| ゲーム事業 | 高収益を生み出す | 主力 |
| メディア&IP事業 | 将来の収益源を育てる | 投資段階 |
広告事業で売上の55%を確保し、ゲームのヒット作で高利益を生み出しました。
この2つの収益源があったからこそ、ABEMAへの556億円投資が可能になったのです。
創業来28期連続増収を実現できたのは、この収益構造があったからと言えます。
稼ぐ→投資の循環!
ABEMAが黒字化して第3の収益柱に成長した
ABEMAは10年の投資期間を経て、2025年に黒字化を達成しました。
投資段階から収益段階へ移行し、第3の収益柱に成長しています。
▼ABEMAの成長
- 2020-2023年度:累計556億円の赤字
- 2025年:黒字化達成
- WAU:2,847万人に成長
スポーツ配信に特化し、FIFAワールドカップ全試合無料配信を実現しました。
AI技術を活用した配信システムは、テレビ局がうらやむレベルに到達しています。
広告・ゲームに続く第3の収益柱として、会社全体の成長を支える存在になったのです。
10年投資が実った!
サイバーエージェントから学ぶマーケティング戦略
サイバーエージェントには、学べる具体的な戦略があります。
時代を先読みする視点と、技術への投資が成功を生み出しています。
2009年にガラケーからスマホへ大胆にシフトした
サイバーエージェントは2009年頃、ガラケーからスマホへ事業を大胆に転換しました。
iPhone登場を契機に、モバイル事業の方向性を180度変えたのです。
▼事業転換の歴史
- 1998年:インターネット広告代理店として創業
- 2000年代:ガラケー向けサービス展開
- 2009年頃:スマホシフトを決断
- 2016年:ABEMA開局
時代の変化を先読みし、既存事業を捨てる勇気が成長につながりました。
この大胆な転換がなければ、創業来28期連続増収は実現できなかったはずです。
BtoB企業も、時代の変化を見極めて事業を進化させることが重要と言えます。
変化を恐れない!
ABEMAでテレビ局がうらやむAI技術を開発した
ABEMAは独自のAI技術で、テレビ局から注目される存在になりました。
視聴データを分析し、ユーザーの嗜好に合わせたコンテンツ推薦を実現しています。
| 技術 | 活用方法 |
| 視聴分析AI | 最適な配信時間を自動決定 |
| レコメンドAI | 次に見たいコンテンツを推薦 |
| 配信最適化AI | 通信環境に応じて画質を調整 |
テレビ局がうらやむレベルの技術を開発し、競争優位性を確立しました。
技術への投資が、WAU 2,847万人という成果につながっています。
BtoB企業も、自社の強みになる技術に投資することで差別化できるのです。
技術が差別化を生む!
現代版トキワ荘で漫画家を無料支援しIPの種を育てる
サイバーエージェントは現代版トキワ荘で19人の漫画家を支援しています。
居住費・光熱費・生活費を無料にして、創作に集中できる環境を提供しました。
▼現代版トキワ荘の支援内容
- 19人の漫画家を選抜
- 居住費・光熱費・生活費を会社が負担
- 創作に集中できる環境を提供
- ヒット作が生まれればメディアミックス展開
IPの種を自社で育て、ヒット作が生まれたらゲーム・アニメ・グッズに展開する仕組みです。
ウマ娘のように、一つのIPで800万DLを達成し時価総額1兆円突破に貢献する可能性があります。
長期的な視点でIPを育てる投資が、将来の大きな収益を生み出すのです。
IPの種を育てる!
サイバーエージェントの成長を支えた施策
サイバーエージェントの成長には、2つの重要な施策があります。
人材と認知度が、企業成長の基盤を作りました。
採用戦略で優秀な人材を集め続けた
サイバーエージェントは「素直で良い人」を採用基準の最優先に置いています。
能力やスキルより、一緒に働きたいと思える人を選ぶ方針です。
▼採用戦略の特徴
- 書類選考なしで全員と面接
- 複数回の面接で人柄を重視
- Rグレード制度で入社意欲の高い人を確保
- 全社員が採用に関わる体制
「能力より一緒に働きたい人」という基準が、強い組織を作る土台になりました。
新卒1-3年目を子会社社長に抜擢できるのも、この採用戦略があるからです。
延べ50人以上の新卒社長を輩出し、経営者を育てる仕組みを確立しています。
人柄重視の採用!
広報・PRで企業の認知度を高めた
サイバーエージェントは広報・PRに力を入れて企業ブランドを高めています。
採用と広報をセットにして、多くの人に興味を持ってもらう仕組みを作りました。
| 施策 | 内容 |
| 社員紹介 | 80人以上の社員を自社サイトで紹介 |
| 企業文化発信 | 「ぶっちゃけ感」を重視した情報発信 |
| 出戻り採用 | 社外に出た人が戻ってくる体制 |
| 産休復職支援 | ママ社員が安心して働ける環境整備 |
採用ブランディングを徹底し、トータルの魅力で人材を惹きつけています。
企業文化をリアルに伝えることで、入社後のミスマッチを防ぐ効果もあります。
広報・PRへの投資が、優秀な人材獲得と企業成長につながっているのです。
ブランド力が人を集める!
サイバーエージェントに関するよくある質問
サイバーエージェントについて、よくある質問をまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
サイバーエージェントの今後の成長戦略は?
サイバーエージェントは3つの柱でさらなる成長を目指しています。
ABEMAの黒字化達成により、次の成長ステージに入りました。
▼今後の成長戦略
- ABEMA:黒字化を維持しながら海外展開も視野
- IP事業:現代版トキワ荘で育てたIPをメディアミックス展開
- AI技術:独自開発したAI技術を他事業にも展開
第3の収益柱として成長したABEMAを軸に、IP×AI×メディアの統合を進めています。
創業来28期連続増収の実績を持つ経営陣が、長期的な視点で投資を続ける方針です。
次の成長へ!
サイバーエージェントのビジネスモデルの強みは?
サイバーエージェントの最大の強みは、稼ぐ事業と育てる事業のバランスです。
広告事業とゲーム事業で安定収益を確保しながら、新規事業に投資できる構造を持っています。
| 強み | 内容 |
| 安定収益 | 広告事業で売上の55%を確保 |
| 高収益 | ゲーム事業で高利益率を実現 |
| 長期投資 | 556億円の赤字でもABEMAに投資 |
| 循環構造 | 稼いだ資金で次の事業を育てる |
短期の赤字を恐れず、10年単位で事業を育てる投資姿勢が成功の鍵です。
この収益構造があるからこそ、ABEMA黒字化やウマ娘800万DLといった成果を出せました。
安定×挑戦のバランス!
IPビジネスで他社と違う点は?
サイバーエージェントは原作からマネタイズまで一気通貫で行います。
現代版トキワ荘で19人の漫画家を支援し、IPの種を自社で育てる仕組みです。
▼IPビジネスの特徴
- 原作:現代版トキワ荘で漫画家を無料支援
- ゲーム化:自社ゲーム事業部で開発
- アニメ化:メディア事業部で制作
- グッズ展開:IPを多角的に活用
他社が外部IPを買うのに対し、サイバーエージェントは育てるところから始めています。
ウマ娘のように一つのIPで800万DLを達成し、時価総額1兆円突破に貢献する可能性があるのです。
長期的な視点でIPを育て、メディアミックス展開する戦略が独自性と言えます。
育てて展開する!
サイバーエージェントのビジネス戦略から学べること
サイバーエージェントの成功には、明確な戦略と実行力があります。
▼本記事のポイント
- 能力より人柄を重視し失敗を許容する組織文化
- 短期の赤字を恐れず長期で育てる投資姿勢
- 時代の変化を先読みして大胆に事業転換
これらの戦略を自社のマーケティング施策に取り入れることで、成長につながります。
マーケティング戦略や採用ブランディングでお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
弊社では、オウンドメディアの戦略設計から記事制作、効果測定まで一貫して支援しております。
貴社の課題に合わせて、最適な施策をご提案いたします。