「離職率を計算したいけど、どの計算方法が正しいのかわからない…」
そんな声は少なくありません。
実は、離職率には法律で定められた統一的な計算方法が存在せず、企業の目的や分析したい期間によって6つの異なる計算方法を使い分ける必要があります。
▼今回の記事でわかることは・・・
- 離職率の基本的な計算式と分母・分子の設定で数値が変わる仕組み
- 厚労省基準を含む6パターンの離職率計算方法と具体的な算出手順
- Excelを使った離職率の自動計算とグラフ化の実践方法
本記事では、人事担当者が自社の課題に応じて適切な離職率を算出できるよう、6つの計算方法を具体例とともに解説します。
人材定着や採用戦略でお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。 弊社では、データ分析に基づく効果的な人材施策のサポートも含め、費用対効果の高いマーケティング施策をご提案しております。
目次
離職率とは?計算式の基本的な考え方
離職率を正しく理解するには、計算式の基本構造を押さえることが重要です。
離職率は一定期間における在籍者のうち、どれだけの従業員が退職したかを示す割合でしょう。
計算方法に法的な定義がないため、企業ごとに異なる基準で算出できます。
離職率=離職者数÷在籍者数×100
離職率の基本的な計算式は「離職者数÷在籍者数×100」です。
この式を使えば、一定期間における従業員の退職状況を数値化できます。
たとえば期初に100名が在籍し、1年間で10名が退職した場合、**10÷100×100=10%**となります。
シンプルな式ですが、分母と分子の設定次第で数値は大きく変動するのです。
分母と分子の設定で数値が変わる
離職率は分母と分子の設定方法によって数値が大きく変動します。
分母を「期初の在籍者数」とするか「年初の常用労働者数」とするかで計算結果が異なるためです。
また分子も「期中に退職した全従業員」とするか「期中に入社して期中に退職した従業員を除く」かで変わります。
厚生労働省は「1月1日現在の常用労働者数」を分母とする一方、多くの企業は「期初(4月1日)の在籍者数」を分母とするのが一般的です。
目的に応じて基準を明確にすることが重要でしょう。
定着率との違いと計算方法
定着率は離職率の対となる指標で、企業に残っている従業員の割合を示します。
計算方法は「100−離職率」という簡潔な式で求められるのです。
たとえば離職率が**10%であれば、定着率は100−10=90%**となります。
離職率が「辞めた人の割合」を示すのに対し、定着率は「残っている人の割合」を示すため、人材定着施策の効果測定に活用できます。
離職率の計算方法①〜③|基本式・厚労省基準・新卒3年
離職率の計算方法を目的別に使い分けることは、人材定着施策の精度を高めるために非常に重要です。
ここでは最も基本的な3つの計算方法を、具体的な数値例とともに解説します。
①基本式|年間離職率の計算方法
年間離職率は企業で最も一般的に使われる計算方法です。
計算式は「期初の在籍者数」を分母とし、「1年間の離職者数」を分子とします。
たとえば4月1日に100名が在籍し、翌年3月31日までに15名が退職した場合、**15÷100×100=15%**となるのです。
期中に入社した従業員は分母に含めないため、純粋な定着状況を把握できます。
②厚労省基準|雇用動向調査の計算方法
厚生労働省の雇用動向調査では独自の計算基準を採用しています。
計算式は「離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」となり、企業の年度とは異なる暦年ベースで算出されるのです。
令和5年の調査では、年初の常用労働者数に対する離職率は**15.4%**と公表されています。
業界平均との比較や公的データとの整合性を重視する場合は、この基準を採用することが効果的でしょう。
③新卒3年以内離職率の計算方法
新卒3年以内離職率は採用活動の成否を測る重要な指標です。
計算式は「特定年度に入社した新卒社員のうち3年以内に離職した人数÷同年度の新卒入社者数×100」となります。
たとえば2021年4月に50名の新卒を採用し、3年以内に10名が退職した場合、**10÷50×100=20%**です。
厚生労働省の調査によると、令和3年3月卒の3年以内離職率は大卒34.9%、**高卒38.4%**となっています。
引用元:厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)
離職率の計算方法④〜⑥|中途1年・5年・月次
結論から言うと、中途採用や短期分析に特化した計算方法を活用することで、より詳細な人材定着の課題が見えてきます。
ここでは実務で役立つ3つの計算方法を解説します。
④中途採用1年以内離職率の計算方法
中途採用1年以内離職率は即戦力人材の定着状況を測る重要な指標です。
計算式は「中途入社者のうち1年以内に離職した人数÷同期間の中途入社者数×100」となります。
たとえば1年間で30名の中途社員を採用し、1年以内に6名が退職した場合、**6÷30×100=20%**です。
中途採用では即戦力が期待される分、早期離職の影響が大きいため、オンボーディング施策の効果測定に活用できるでしょう。
⑤5年離職率の計算方法
5年離職率は組織の長期的な人材定着力を把握するために有効です。
計算式は「特定年度に入社した従業員のうち5年以内に離職した人数÷同年度の入社者数×100」となります。
たとえば2019年度に40名を採用し、5年以内に12名が退職した場合、**12÷40×100=30%**です。
5年という期間は従業員がキャリアの基盤を築く重要な時期であり、この数値が高い場合は育成体制や評価制度の見直しが必要と考えられます。
⑥月次離職率の計算方法
月次離職率は短期的な人材流出の傾向を素早く把握できる指標です。
計算式は「当月の離職者数÷前月末の在籍者数×100」となり、月単位での変動を追跡できます。
たとえば前月末に200名が在籍し、当月に4名が退職した場合、**4÷200×100=2%**となるのです。
繁忙期や組織変更後など、特定のタイミングでの離職増加を早期発見し、迅速な対策を講じることが可能となります。
Excelで離職率を自動計算する方法
Excelを活用すれば、離職率の計算を自動化し、継続的なモニタリングが可能になります。
関数を組み込むことで、データ入力だけで瞬時に離職率を算出できるのです。
基本計算式の関数設定
Excelで離職率を自動計算するには、基本的な数式を関数として設定することが効果的です。
セルA1に「在籍者数」、セルB1に「離職者数」を入力し、セルC1に「=B1/A1*100」と入力すれば、自動で離職率がパーセント表示されます。
たとえば在籍者数100、離職者数15と入力すれば、即座に**15%**と表示されるのです。
この基本式をテンプレート化しておけば、毎月のデータ更新だけで最新の離職率を把握できるでしょう。
期間別・採用区分別の集計方法
期間別や採用区分別の離職率を算出するには、SUMIF関数やピボットテーブルを活用します。
SUMIF関数を使えば「=SUMIF(採用区分列,”新卒”,離職者列)/COUNTIF(採用区分列,”新卒”)*100」という形で、新卒のみの離職率を抽出できるのです。
またピボットテーブルを使えば、年度別・部署別・採用区分別などの多角的な分析が可能となります。
データを「年度」「部署」「採用区分」「離職フラグ」の列で管理することで、複雑な集計も簡単に実行できます。
グラフで推移を可視化する
離職率の推移をグラフ化することで、経営層への報告や課題の可視化が容易になります。
折れ線グラフを使えば月次離職率の変動トレンドが一目でわかり、棒グラフを使えば部署別や採用区分別の比較が明確になるでしょう。
Excelの「挿入」タブから「おすすめグラフ」を選択すれば、データに適したグラフが自動提案されます。
グラフに目標値のラインを追加すれば、現状と目標のギャップを視覚的に把握でき、改善施策の優先順位付けに役立ちます。
自社の課題に合った離職率計算方法の選び方
離職率の計算方法は、自社が抱える課題や分析目的に応じて適切に選択することが重要です。
ここでは、課題別に最適な計算方法を整理します。
6つの計算方法を使い分けることで、人材定着施策の精度が大きく向上するでしょう。
| 課題・分析目的 | 推奨する計算方法 |
| 全社的な人材定着状況を把握したい | ①基本式(年間離職率) |
| 業界平均や他社と比較したい | ②厚労省基準(雇用動向調査) |
| 新卒採用の成否を評価したい | ③新卒3年以内離職率 |
| 中途採用のオンボーディング効果を測定したい | ④中途採用1年以内離職率 |
| 長期的な人材育成の課題を発見したい | ⑤5年離職率 |
| 繁忙期や組織変更の影響を素早く把握したい | ⑥月次離職率 |
複数の計算方法を組み合わせることで、表面的な数値だけでは見えない課題が浮き彫りになります。
たとえば年間離職率は低いのに新卒3年以内離職率が高い場合、新卒向けの育成体制に問題がある可能性が高いでしょう。
逆に月次離職率で特定の月に急増が見られる場合、その時期特有の要因(繁忙期の負荷、評価時期の不満など)を特定できます。
離職率は単なる数値ではなく、組織の健康状態を示す重要なバイタルサインです。
目的に応じた適切な計算方法を選択し、継続的にモニタリングすることで、人材定着施策の効果を最大化できるのです。
まとめ
離職率をどう計算すべきか迷っている人事担当者は少なくありません。
法律で統一された計算方法が存在しないからこそ、自社の課題に合わせて6つの計算方法を使い分けることが重要です。
年間離職率で全体傾向を把握し、新卒3年以内離職率や中途採用1年以内離職率で採用区分別の課題を特定できます。
さらに月次離職率で短期的な変動を追跡し、5年離職率で長期的な育成体制を評価することで、表面的な数値だけでは見えない問題が明らかになるでしょう。
Excelを活用した自動計算とグラフ化により、継続的なモニタリングも容易になります。
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