実は、直販比率を10%から30%に引き上げるだけで営業利益率が大幅に改善する企業が増えており、D2C市場は2025年に3兆円規模に達すると予測されています。
▼今回の記事でわかることは・・・
- 中間マージン削減による粗利率改善の具体的な計算方法
- 代理店との関係を維持しながら直販比率を高める3ステップ
- 業種別の最適なチャネル配分比率と段階的なロードマップ
本記事では、外販依存から脱却して利益率を改善したい企業向けに、既存の店販・外販チャネルを守りながら直販比率を段階的に高めていく具体的な戦略と、失敗しないための注意点を解説します。
弊社は費用対効果の高いマーケティング施策をご提案しております。
直販比率10%の壁を突破する3つの利益構造改革
多くの企業が直販比率10%未満にとどまっている現状があります。
代理店や卸売業者への依存度が高いほど、中間マージンによって利益が圧迫されるのです。
ここでは、直販比率10%の壁を突破するための3つの利益構造改革について解説します。
中間マージン20%削減で見えてくる粗利率の変化
中間マージンの削減は、直販シフトによる最大のメリットと言えます。
一般的な流通構造では、メーカーから卸売業者、小売業者を経て消費者に届くまでに15〜25%程度のマージンが発生するのです。
直販に切り替えることで、このマージン分を自社の粗利として確保できます。
たとえば、製造原価100円の商品を代理店経由で400円で販売した場合、代理店マージン200円を差し引くと粗利は100円となります。
一方、同じ商品を直販で400円販売すれば粗利は300円となり、粗利率が25%から75%へと3倍に改善するのです。
既存チャネルを守りながら直販を始める3ステップ
既存の販売チャネルを維持しながら直販を開始するには、段階的なアプローチが重要です。
まずステップ1として、既存チャネルで取り扱っていない商品やサービスから直販を開始します。
チャネル間での競合を避けることで、代理店との関係悪化を防げるでしょう。
ステップ2では、直販限定の付加価値サービスを設計します。
たとえば、カスタマイズ対応や会員限定特典など、代理店では提供できない価値を付加するのです。
ステップ3として、顧客データを活用したリピート施策を強化し、直販チャネルの売上基盤を固めていきます。
小規模スタートで失敗リスクを最小化する方法
直販への参入は、小規模からのスタートがリスク管理の観点で効果的です。
初期投資を抑えるために、まずは既存のECプラットフォームを活用した販売からはじめることをおすすめします。
自社ECサイトの構築には数十万円から数百万円のコストがかかりますが、既存プラットフォームなら月額数千円から開始できるのです。
また、物流についても自社で倉庫を持つのではなく、物流代行サービスを活用することで固定費を変動費化できます。
売上規模が拡大してから自社体制を構築しても遅くはないでしょう。
外販7割企業が直販シフトで陥る3つの罠と回避法
外販依存度が高い企業ほど、直販シフトには慎重なアプローチが求められます。
急激な直販強化は、既存の販売パートナーとの関係悪化やコスト増大を招く可能性があるためです。
ここでは、外販7割企業が陥りやすい3つの罠とその回避方法を解説します。
代理店との関係悪化を避けるコミュニケーション設計
直販を開始する際に最も注意すべきは、代理店との関係維持です。
事前の説明なく直販を始めると、代理店から「顧客を奪われる」という不信感を持たれる可能性があります。
回避するためには、直販開始前に代理店への丁寧な説明と、役割分担の明確化が不可欠となるでしょう。
具体的には、直販で獲得した顧客のうち特定エリアの顧客は代理店に紹介するなど、Win-Winの関係構築を意識することが重要です。
また、代理店向けの販売支援ツールや研修プログラムを提供することで、パートナーシップを強化する方法も効果的となります。
直販コスト増大で利益率が下がる典型パターン
直販シフトで陥りやすい罠の2つ目は、想定外のコスト増大です。
EC運営には、サイト構築費用だけでなく、決済手数料、物流費、人件費、広告費など多岐にわたるランニングコストが発生します。
日本ロジスティクスシステム協会の調査によると、**物流コスト比率は全業種平均で5.7%**に達しており、年々上昇傾向にあるのです。
さらに、カスタマーサポートや返品対応などの業務負担も増加するため、人件費も膨らみやすくなります。
対策として、物流や決済などは専門業者へのアウトソーシングを活用し、固定費を変動費化することで損益分岐点を下げる工夫が必要でしょう。
価格設定のミスが引き起こすチャネル間競合
3つ目の罠は、価格設定のミスによるチャネルコンフリクトです。
直販価格を代理店経由の販売価格より安く設定してしまうと、代理店の顧客が直販に流れ、代理店の売上が減少します。
この状態が続くと、代理店が競合他社製品への切り替えを検討し始める可能性があるのです。
回避策としては、直販と代理店販売で価格を統一するか、直販限定商品を設けて棲み分けを図る方法が有効となります。
なお、代理店に対して販売価格を強制することは独占禁止法に抵触する恐れがあるため、希望小売価格の提示という形で対応することが望ましいでしょう。
店販・外販・直販の最適バランス設計
販売チャネルの最適なバランスは、業種や商品特性によって大きく異なります。
一律に「直販比率を高めれば良い」というわけではなく、自社の状況に応じた設計が必要です。
ここでは、業種別の理想的なチャネル配分と利益率改善の仕組みを解説します。
業種別の理想的なチャネル配分比率
業種によって最適なチャネル配分は異なります。
以下は業種別の参考となる配分比率です。
| 業種 | 直販比率 | 外販比率 | 店販比率 |
| 食品メーカー | 20〜30% | 50〜60% | 10〜30% |
| アパレル | 30〜50% | 30〜40% | 20〜30% |
| 化粧品 | 40〜60% | 20〜40% | 10〜20% |
| 産業機械 | 10〜20% | 70〜80% | 5〜10% |
食品や日用品など購買頻度が高く単価が低い商品は、流通網を活用した外販比率を高めに設定するのが効率的です。
一方、化粧品やアパレルなどブランド価値が重要な商品は、直販比率を高めて顧客との直接的な関係構築を重視する傾向にあります。
直販比率30%で営業利益率が20ポイント改善する理由
直販比率30%到達は、多くの企業にとって利益改善の転換点となります。
経済産業省の調査によると、製造業の売上高営業利益率は平均4.0〜4.9%、小売業は**2.1〜2.8%**にとどまっているのです。
しかし、直販比率を高めた企業では、中間マージンの削減により営業利益率が10%を超えるケースも珍しくありません。
具体的な計算例を示すと、売上1億円・外販100%の企業が直販比率を30%に引き上げた場合を想定します。
外販の粗利率30%に対し、直販の粗利率が60%であれば、全体の粗利率は39%へと9ポイント改善するのです。
この粗利改善分から直販に必要なコストを差し引いても、営業利益率は大幅に向上する計算となります。
各販路の利益率を可視化する計算式と管理方法
チャネル別の利益率を正確に把握することが、最適なバランス設計の第一歩です。
各販路の利益率は以下の計算式で算出できます。
▼チャネル別営業利益率の計算式 ・直販営業利益率 = (直販売上 − 製造原価 − 直販運営コスト)÷ 直販売上 × 100 ・外販営業利益率 = (外販売上 − 製造原価 − 代理店マージン)÷ 外販売上 × 100
重要なのは、直販運営コストを正確に把握することです。
EC運営費用、物流費、広告費、人件費などを漏れなく計上しないと、直販の収益性を過大評価してしまう恐れがあります。
月次でチャネル別の損益を管理し、PDCAサイクルを回すことで継続的な改善が可能となるでしょう。
直販比率を段階的に高める実行ロードマップ
ここまで解説した内容を踏まえ、直販比率を段階的に高めるロードマップを整理します。
急激な変化は組織にも取引先にも混乱を招くため、3年程度の中期計画で進めることをおすすめします。
▼直販比率向上ロードマップ(3年計画)
| フェーズ | 期間 | 目標直販比率 | 主な施策 |
| 準備期 | 0〜6ヶ月 | 現状維持 | 市場調査、代理店への事前説明、EC基盤構築 |
| 導入期 | 6〜12ヶ月 | 10% | 直販限定商品の投入、小規模テスト販売 |
| 拡大期 | 1〜2年目 | 20% | 顧客データ活用、リピート施策強化 |
| 定着期 | 2〜3年目 | 30% | チャネル別KPI管理の確立、最適化 |
準備期では、代理店との信頼関係構築を最優先に進めます。
直販開始の意図と代理店への影響を丁寧に説明し、共存共栄の方針を明確にすることが重要です。
導入期は、既存チャネルと競合しない直販限定商品からスタートします。
小規模で始めることで、運営ノウハウを蓄積しながらリスクを最小化できるでしょう。
拡大期には、直販で得た顧客データを活用してリピート施策を強化します。
顧客の購買履歴や行動データを分析し、パーソナライズされた提案を行うことでLTV(顧客生涯価値)の最大化を図るのです。
定着期では、チャネル別のKPIを設定し、継続的な最適化を行います。
直販・外販・店販それぞれの利益率、顧客獲得コスト、リピート率などを定期的にモニタリングし、バランスを調整していくことが求められます。
まとめ
直販比率の向上は、外販依存から脱却して利益率を改善するための有効な手段です。
しかし、急激な直販シフトは代理店との関係悪化やコスト増大を招くリスクがあります。
成功のカギは、既存チャネルとの共存を図りながら、3年程度の中期計画で段階的に直販比率を高めていくことにあるのです。
まずは直販限定商品の小規模テストから始め、運営ノウハウを蓄積しながら徐々に拡大していきましょう。
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