「自社の労働生産性が業界水準と比べてどの程度なのか、把握できていない…」
そんな声は少なくありません。
実は、労働生産性は計算式を用いれば自社で簡単に算出でき、業界平均と比較することで経営改善の糸口が見えてきます。
▼今回の記事でわかることは・・・
- 物的労働生産性と付加価値労働生産性の違いと計算式
- 業種別・規模別の労働生産性平均値と自社との比較方法
- 数値が低い場合に取り組むべき3つの改善ポイント
本記事では、労働生産性の計算式を基礎から解説し、中小企業が自社の立ち位置を把握して経営判断の精度を高めるための具体的な方法を紹介します。
労働生産性の向上や経営改善でお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。 弊社では、データに基づく経営分析から改善施策の立案まで、費用対効果の高いマーケティング施策をご提案しております。
目次
労働生産性の計算式とは?物的と付加価値の2種類を解説
労働生産性を正しく把握したいものの、どの計算式を使えばよいかわからないとお悩みではありませんか。
労働生産性には「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2種類があり、それぞれ測定する対象が異なります。
自社の課題に合った計算式を選ぶことで、より正確な現状把握と改善策の立案が可能となるでしょう。
物的労働生産性の計算式と活用場面
物的労働生産性とは、労働者1人あたりまたは1時間あたりの生産量を示す指標です。
計算式は「生産量÷労働量(従業員数または労働時間)」で算出できます。
この指標は製品の個数や重量など、目に見える成果を測定したい場合に適しています。
そのため、製造業の生産ラインや工場での効率改善を検討する際に活用されることが多いでしょう。
生産プロセスの改善効果を数値で把握したい企業にとって、物的労働生産性は有効な指標と言えます。
付加価値労働生産性の計算式と算出法
付加価値労働生産性とは、従業員1人あたりがどれだけの付加価値を生み出しているかを示す指標です。
計算式は「付加価値額÷従業員数」で求められます。
付加価値額の算出方法には、売上高から外部購入費用を差し引く「控除法(中小企業庁方式)」と、人件費や減価償却費などを合算する「加算法(日銀方式)」の2種類があります。
一般的には「営業利益+人件費+減価償却費」で簡易的に算出することも可能です。
サービス業や卸売業など、金額ベースで成果を測定したい業種では、この付加価値労働生産性が広く活用されています。
引用元:財務省 法人企業統計調査
自社に適した計算式を選ぶための基準
自社に適した計算式を選ぶ基準は、「何を改善したいか」という目的によって異なります。
生産現場の効率を改善したい場合は物的労働生産性を、企業全体の収益性を高めたい場合は付加価値労働生産性を選ぶとよいでしょう。
また、業界平均との比較を行う際は、公的統計で用いられている付加価値労働生産性を採用することが一般的です。
中小企業白書などの公的データも付加価値ベースで算出されているため、自社の立ち位置を把握しやすくなります。
まずは付加価値労働生産性で全体像を把握し、課題が見えたら物的労働生産性で詳細分析を行うという流れが効果的です。
労働生産性の計算例|業種別のシミュレーション
労働生産性の計算式を理解しても、実際にどう計算すればよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、製造業とサービス業それぞれの具体的な計算シミュレーションを紹介します。
自社の数値を当てはめることで、業界平均との比較が容易になるでしょう。
製造業における計算シミュレーション
製造業における付加価値労働生産性の計算例を見てみましょう。
たとえば、年間売上高2億円、外部購入費用(原材料費・外注費など)1億2,000万円、従業員数10名の製造業企業の場合を考えます。
付加価値額は「2億円-1億2,000万円=8,000万円」となります。
これを従業員数で割ると「8,000万円÷10名=800万円/人」が労働生産性です。
財務省の法人企業統計によると、2023年度の製造業全体の労働生産性は947万円であり、この企業は平均をやや下回る水準と判断できます。
引用元:財務省 法人企業統計調査
サービス業における計算シミュレーション
サービス業では、付加価値の構成が製造業とは異なる点に注意が必要です。
たとえば、年間売上高1億円、外部購入費用2,000万円、従業員数15名のサービス業企業を想定します。
付加価値額は「1億円-2,000万円=8,000万円」となります。
労働生産性は「8,000万円÷15名=約533万円/人」と算出できるでしょう。
2023年度の非製造業全体の労働生産性は728万円であるため、この企業は業界平均を下回っていることがわかります。
サービス業は製造業と比較して労働集約型の傾向があり、業種によっては300万円台から1,000万円超まで大きな差が生じる点も把握しておくとよいでしょう。
エクセルで効率的に算出する手順
労働生産性を継続的に管理するには、エクセルでの算出が効率的です。
基本的な手順として、まずA列に「売上高」、B列に「外部購入費用」、C列に「従業員数」を入力します。
D列には付加価値額を算出する数式「=A2-B2」を、E列には労働生産性を算出する数式「=D2/C2」を設定しましょう。
月次や四半期ごとにデータを追加すれば、推移をグラフ化して傾向分析も可能となります。
定期的な測定により、施策の効果検証や目標設定の精度が向上するため、経営判断の質を高めることができるでしょう。
業界平均と比較して自社の立ち位置を把握する方法
自社の労働生産性を算出しても、その数値が高いのか低いのか判断できなければ意味がありません。
業界平均や企業規模別のデータと比較することで、初めて自社の立ち位置が明確になります。
ここでは、公的統計をもとにした比較方法と、数値が低い場合の確認ポイントを解説します。
中小企業と大企業の平均値を比較
中小企業と大企業では、労働生産性に大きな差があることが公的データから明らかになっています。
中小企業白書によると、中小企業の労働生産性は製造業・非製造業ともに約530万円前後で推移しており、長らく横ばい傾向が続いています。
一方、大企業の労働生産性は製造業で約1,400万円、非製造業で約1,300万円と、中小企業の2倍以上の水準です。
ただし、中小企業の上位10%の水準は大企業の中央値を上回っているというデータもあります。
企業規模だけで労働生産性が決まるわけではなく、経営努力次第で改善できる余地は十分にあると言えるでしょう。
業種別の労働生産性ランキング一覧
労働生産性は業種によって大きく異なるため、同業種との比較が重要です。
以下に、業種別の労働生産性の目安を示します。
| 業種 | 労働生産性の目安 |
| 情報通信業 | 900万円前後 |
| 卸売業 | 700〜750万円 |
| 製造業 | 600〜700万円 |
| 建設業 | 550〜650万円 |
| 小売業 | 400〜500万円 |
| 飲食サービス業 | 300〜400万円 |
情報通信業や卸売業は比較的高い水準にある一方、飲食サービス業や小売業は業界全体として低い傾向にあります。
自社の数値を評価する際は、全産業平均ではなく同業種の平均と比較することが重要です。
引用元:総務省統計局 経済センサス
数値が低い場合に確認すべきポイント
労働生産性が業界平均を下回っている場合、いくつかの視点から原因を分析する必要があります。
まず確認すべきは「付加価値額」と「従業員数」のどちらに課題があるかという点です。
付加価値額が低い場合は、売上高の伸び悩みや原価率の高さが要因として考えられます。
従業員数に対して付加価値が見合っていない場合は、業務プロセスの非効率や人員配置の偏りが課題かもしれません。
また、同じ業種内でも上位企業と下位企業では労働生産性に数倍の差が生じることもあるため、自社の改善余地を見極めることが経営改善の第一歩となるでしょう。
労働生産性を改善するための3つの実践ポイント
労働生産性の現状を把握したら、次は具体的な改善施策に取り組む段階です。
労働生産性を高めるには、「付加価値額を増やす」か「労働投入量を減らす」かのいずれかのアプローチが必要となります。
ここでは、中小企業が取り組みやすい3つの実践ポイントを解説します。
業務プロセスの見直しによる効率化
労働生産性を改善する第一歩は、現状の業務プロセスを見直すことです。
まずは各業務にかかる時間を可視化し、無駄な作業や重複している工程がないかを洗い出しましょう。
会議時間の短縮や承認フローの簡素化など、小さな改善でも積み重ねることで大きな効果が期待できます。
特に属人化している業務は、マニュアル化や標準化を進めることで効率が向上するケースが多いでしょう。
業務の棚卸しを定期的に行い、継続的な改善サイクルを回すことが生産性向上の基盤となります。
人材配置の最適化と教育への投資
従業員一人ひとりのスキルや適性を把握し、最適な人材配置を行うことも労働生産性の向上に直結します。
適材適所の配置により、個々のパフォーマンスが最大化され、組織全体の生産性が高まるのです。
また、従業員教育への投資も重要な施策となります。
スキルアップ研修やOJTの充実により、一人あたりの業務処理能力が向上すれば、同じ人数でもより多くの付加価値を生み出せるでしょう。
人材は企業にとって最も重要な経営資源であり、その育成と活用が生産性向上の鍵を握っています。
ITツール導入による業務の自動化
ITツールの導入は、労働生産性を向上させる効果的な手段の一つです。
たとえば、データ入力や請求書処理などの定型業務を自動化すれば、従業員はより付加価値の高い業務に集中できます。
クラウド型の業務管理ツールやチャットツールを活用することで、情報共有のスピードも向上するでしょう。
中小企業向けには「IT導入補助金」などの支援制度も用意されており、導入コストを抑えることも可能です。
ただし、ツールを導入しただけでは効果は限定的であり、業務フローの見直しとセットで取り組むことが成功のポイントとなります。
計算式の活用で経営判断の精度を高めよう
労働生産性は、自社の経営状態を客観的に把握するための重要な指標です。
計算式を用いて定期的に測定し、業界平均や過去の自社データと比較することで、改善すべきポイントが明確になります。
数値が低い場合は、業務プロセスの見直し、人材配置の最適化、ITツールの導入といった具体的な施策に取り組むことで改善が期待できるでしょう。
まずは自社の労働生産性を算出し、現在地を把握することから始めてみてください。
労働生産性の向上や経営改善でお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。 弊社では、データ分析に基づく課題の可視化から改善施策の立案まで、費用対効果の高いマーケティング施策をご提案しております。